連続ドラマが終了したり、テレビ番組のレギュラーが交替すると、何々ロスと言われるようになりました。

大きい小さいあるでしょうが、生きていてる限り、絶対に別れはつきもので避けられません。

依頼主は概ね、生活の中に困りごとを抱えているがために、探偵に調査を依頼します。

調査をする中で、別れを覚悟しなければならない状況に直面することも多いものです。

今回は坂口幸広著「喪失学」を参考に、ロス後の生き方を模索します。

 

 

 

失うことを見据えて生きること

 

人間は、生まれ出た瞬間から、死へ向かって歩みはじめる。
死ぬために、生きはじめる。

「池波 正太郎」「鬼平犯科帳」「剣客商売」で有名な文豪の言葉です。
生まれたからには、いつか絶対に死ぬことは分かりきっているし、自分以外の人も例外ないのに、
ついついそのことを忘れがちです。
そのために、いざ別れに遭遇すると、失ったダメージに耐えられなくなるのです。

なかなか、文豪のように達観することはできませんね。
池波さんは太平洋戦争の頃がちょうど、青春期を過ごしており、若い時期に大きな喪失体験をしている人は人生に対する達観度が違いますね。

喪失体験の受け止める側としては、むしろ、ずっと成功してきて、幸福だった人に比べ、挫折や別れを体験している人の方が打たれ強いようです。

 

喪失の5種類とその複合

 

喪失学では失うものを5つに定義しています。

1・人物の喪失
2・所有物の喪失
3・環境の喪失
4・身体の一部分の喪失
5・目標や自己のイメージ

この分類を、離婚になぞらえてみます。

まず、離婚によって、パートナーや子供、パートナーとのつながりで生まれた人間関係も喪失するでしょう。
また、パートナーと共有していた家や土地も手放す必要も出てくるので、当然所有物も喪失します。
また、離婚によって、今までいた職場や学校、コミュニティから離れ、新たな環境で生きていく場合もあります。

思い描いていた結婚生活が破綻し、理想が破れたり、無難に結婚生活を送れずに自分を責めてしまうかもしれません。
離婚をすれば、4の「身体の一部の喪失」を除いて、4つの喪失を体験することになります。

このように、1つの体験から、複合的に喪失が起こっていることが分かります。

 

あいまいな喪失もまた苦しい

 

その他に、喪失の対象がはっきりしない場合もあります。

たとえば、災害で行方不明のまま、遺体が出てこない、パートナーが重い障害を抱えて別人のようになってしまったなど、ロスを抱えながら、他の人に共感してもらいづらいものもあります。
その事態に陥った人は、理解してもらえないという2重の苦しみにさらされます。
しかしながら、最近は震災経験者、ペットロス、障害を抱えた家族の苦しみなど、ロスに対する理解が進んでいる傾向があり、共感しあえる環境になりつつあります。

 

男性の方が配偶者の死に耐えられない理由

 

樹木希林・内田裕也ご夫婦、朝丘雪路・津川雅彦ご夫婦、2組とも長らく別居していたようですが、奥さんが亡くなると、後を追うように旦那さんも亡くなりました。
選手として指導者として野球界に数々の功績を残し、また、四書五経の精読から得た強要でたくさんの著書を残した故野村克也さんも、 沙知代夫人を亡くすとみるみる憔悴していきました。
2020年4月に亡くなった脚本家・橋田壽賀子さんと対談していましたが、旦那さんと死別して30年以上一人でもはつらつと暮らす橋田さんと比べ、野村さんの意気消沈ぶりがきわだっていました。

このようになぜ、夫の方が妻に先立られた場合に気落ちすることが多いのでしょうか?
「喪失学」では、夫の方が妻に依存する割合が高いからだと解説しています。
妻の方は、夫に寄りかかっていないので、立ち直りが早いと言えそうです。

 

喪失にあったときに直面する2つの問題

 

「喪失学」では喪失にあったときには大きく2つの問題に直面すると言います。

・喪失の現実をどのように受け入れるか
・喪失の結果として生じる生活上の問題

先ほどの妻に先立たれた場合だと、妻を失った喪失感を受け止めることもありますし、実際に衣食住などの生活面で妻に任せっぱなしにしだと、たちまちどうすればいいのか分からない。
生活が乱れてしまって、精神的に肉体的にも衰弱していくのかもしれません。

 

喪失に対する10個の問い

 

最後に、終盤で解説されている10の質問を紹介します。本文は長いので短めにまとめました。

1・人生の中でどんな大切なものを失ってきたか?
2・その中で、喪失の影響が一番大きかったのは
3・重大な喪失体験ではどのような影響を及ぼしたか?
4・重大な喪失体験の種類や強さは時間の経過と共にどのように変化してきたのか?
5・これまで重大な喪失体験についてどのように対応してきたか?
6・失った対象があなたに与えてくれたものは何?
7・重大な喪失体験を通じて得たことや学んだことは?
8・いつかは失ってしまうかもしれないけど、まだ失っていないものは何ですか?
9・あなたが絶対に失いたくないものは何ですか?
10・将来、大切何かを失うことを見据えて、あなたが今できることは何か?

この10の質問に丁寧に答えることで、人生の中で体験した喪失を振り返り、現在の喪失に耐えて、かつ将来くるであろう喪失にも備えることができます。