1990年、イラクがクウェートに侵攻した湾岸戦争で 、多くの取り残された日本人が人質になりました。
また1996年ペルーの首都リマの日本大使館がゲリラに襲撃され、70人の人質がとられました。
「いつになったら解放されるのか? それともずっと人質のまま? あるいは殺される?」
一切抵抗できない状態で、全く先の見通しがない状況……
こんな目にあったら、多くの人が絶望や不安に襲われてしまうでしょう。
場合によってはメンタル疾患になってしまう人もいます。
そんな中、1人のカウンセラーが発信したメッセージが人質の心を励まします。
宗像恒次さんが作った「サバイバル五ヶ条」です。
その著書「見通しが立たない状況下で生き残る方法」で五ヶ条の詳しい解説をしています。
コロナ禍で、世界中で先行きが全く不透明で、心がさいなまれている人も多いのではないでしょうか?
「サバイバル五ヶ条」を胸に刻んで、強く柔軟に生きていきましょう。

 

 

 

第1条・決して希望を捨てない

 

自由に暮らしている人ならともかく、人質は情報が全く入ってこない場所にいます。
そのなかでは、絶望するほうがむしろ当たり前じゃないかと思うのですが……
宗像先生は、「まず絶望しないこと」と訴えます。
「おい、おい、そんなの無理だろう」と思われる方も多いでしょう。
しかし、宗像先生はラットの実験をたとえにします。
ラットのひげを切り、人間の手で包み込みます。
ラットにとってひげはセンサーの役目を果たすので、ひげがなくなると暗闇にいるも同然になるのです。
無力感を感じたラットはそのまま、人の手の中で動かなくなりました。
通常ラットは水に落ちても60、70時間は泳ぎ続けるところ、ひげなしラットを水に入れるとものの数秒で溺れ死んだと言うのです。
その後、解剖した結果、ラットは溺れ死んだのではなく、恐怖のあまり交感神経系が働きすぎてしまい、その反動で副交感神経が異常に働いて心臓が止まったようです。
一方、同じ状況下でも、溺れても人間がラットその度に救いだすのを繰り返すと、「窮地にあっても必ず自分は助かると信じ」ラットは希望を失わないことが分かりました。
同じ状況でも、「絶望」と「希望」のどちらを選択するかで、かくも結果が変わってしまうのです。
非現実的な、ポジティブシンキングはできないにしても、心が絶望していると、現実的に絶望的な状況が起こるのは間違いないようです。

 

第2条・同じ境遇にある人たちと語り合う

 

もし同じ境遇ので悩んでいる人がいれば、その人たちと一緒に悩みを共有すれば、苦しみを分かち合うことができます。

コロナでも飲食店など同じ業種であれば悩みが共有できそうです。
「そんな! 悩みを話せるひとなんていないよ!」という人でも大丈夫。
なんと、独り言で自分に語りかけるだけでいいんだそうです。
独り言に抵抗がある場合は、ガムを噛むだけでもいいのだとか。
メジャーリーガーがガムを噛んでいるのは、ストレスを軽減するため。
しゃべること、ガムを噛むことも同じ咀嚼行動で、緊張物質ノルアドレナリンの分泌を抑える役目があります。

 

第3条・1日に何か一つ楽しみを作る

 

コロナ禍で収入が激減して、不足分を補うために必死にいつも以上に働いている人もいるかもしれません。
精神的にも肉体的にも時間的にも、なにか楽しみを見つけている余裕はないかもしれません。
でも、そんなときこそ、何か1つでもいいから楽しみを見出すことをおすすめします。
湾岸戦争で人質になった人達は様々な国の人でした。
そこで、人質たちはお互いの国の言葉を教え合いました。
とんだ形の国際交流ですが、語学学習が楽しみになって、つらい人質生活を乗り越えることができました。
確かにコロナ後の生活は、これまでの生活より不自由が強いられています。
しかし、その中でも、楽しみを見つけだすことは可能です。
例えば、リモート生活で、料理や家事に目覚めた人もいるでしょう。溜まっていた本・漫画・DVDを見るチャンスが増えています。

 

第4条・穏やかに現実的に対処する

 

極限状態に追い込まれると、思い込みと妄想に陥る人がいます。
たとえば人質になった場合は、早く脱出するために、ものごとの後先を考えず行動しがちです。
早まった行動は逆効果になり、ゲリラに怪しまれて最悪の場合、殺されてしまいます。
そんなことにならないためにも、冷静に現実に対処することが肝心です。
瞑想や呼吸法を勧めていますが、追い詰められた状況でも「まぁいいか」とつぶやくのも心を落ち着かせる効果があります。

 

第5条・今なぜここにいるかの意味を考える

 

最後の第5条では自分の生きている使命について考えます。
厳しい状況の中では、逆に「何のために生きているのか分からない」とマイナス思考になってしまうのも無理もないでしょう。

でもここで、あえてポジティブに考えて、こんな自分でも生きているのはきっと何か使命があると考えることが大事と訴えています。

人生の困難に直面している全ての人にあてはまる「サバイバル五カ条」でした。