大ヒットしたアニメ「鬼滅の刃」の主人公竈門炭治郎は、親孝行で兄弟思い。 自分の思いを殺して、少年ながら働いて、家族の幸せだけを願う心優しい少年です。
終戦後の日本の小学校に必ずあった二宮金次郎の像を思い出させます。
親の目線からすると、こんな子供がいたら……と思うほどのいい子チャンぶりが、親世代も巻き込むヒットになった一因かもしれません。
一見理想像に見える漫画のキャラクターも、実はアダルトチルドレンという、幼少期からの心の闇の投影だと解釈できます。
アダルトチルドレンはのちのちの人生に黒い影を落とします。またアダルトチルドレンにはいくつかの類型があります。
人気漫画のキャラクターを通して、アダルトチルドレンのパターンを読み解いていきます。
いい子チャン炭治郎はお世話焼き係のケアテイカー
「海賊王に俺はなる」「魔法帝になる」「No.1ヒーローに」。少年漫画の主人公と言えば、途方もない夢を追いかけるのが定番です。しかし、炭治郎は家族が幸せならば、自分はどうなってもいいという精神の持ち主。
漫画では、こんなキャラクターはなかなか珍しいです。
古いですが、「巨人の星」の主人公飛雄馬のお姉さん・明子を彷彿とさせます。
父と弟の世話ばかりをして、自分のことは後回しの人です。
炭治郎も徹底的に自分のことを後回しにして、ひたすらまわりのことばかりを気にかけている人です。
「自分がこうしたい」「ああなりたい」と思うより、なぜもっと人のためにできなかったのかと反省しています。
こんなタイプはアダルトチルドレンの類型では「ケアテイカー」お世話係と呼ばれています。
トラブルばかりの家族の中で、いつの間にか自分を犠牲にしてまわりの世話を役回りをしています。炭治郎は鬼殺隊に入ってからも、他の隊員たちの面倒も見ていました。
同じ少年ジャンプの「僕のヒーローアカデミア」では№1ヒーロー・エンデヴァーの娘・冬美でしょうか?
エンデヴァーは自分の血から、最強のヒーローを育て上げようと無理な教育をしたために長男が犠牲になり、それがきっかけで家族が崩壊してしまいます。
その家族の絆を繋ぎ止めようと、冬美は一人で家族を取り持つ役割をしています。
逆境の反動からのヒーロー願望
続いては逆境の反動からヒーローを演じようとするパターンです。「鬼滅の刃」では、映画で大活躍した炎柱・煉獄杏寿郎です。
煉獄の父も鬼殺隊士でしたが、火の呼吸の使い手にはとてもかなわないと諦め、落ちぶれていきました。
その逆境を跳ね返そうと、ヒーローをめざします。
煉獄は太陽のような強さとあたたかさを持っていましたが、これも天然のものではなく、自分がこうなりたいと思った理想像を演じていたのかもしれません。
「ヒロアカ」で言うと、轟焦凍(とどろきしょうと)でしょうか?
焦凍もまた父・エンデヴァーの心の闇を知っており、父を超えるヒーローをめざしています。
この場合、実際に理想どおりにヒーローになれればいいのですが、挫折した場合は自分やまわりを責めてしまうことになりかねません。
家族の中の犠牲者に……スケープゴート
一見、幸せな家族の中で一身の不幸を背負ってしまう人。
「ヒロアカ」ではエンデヴァー家族の長男だった荼毘(だび)でしょうか? エンデヴァーの過剰な期待に応えるために、無理して炎の能力を開発しようとして大やけど。挙げ句の果てに悪者=ヴィランになってエンデヴァーに復讐しようとします。
また、敵の親玉・死柄木弔(しがらきとむら)も父から虐待された反動で悪の道に入っていきます。
このタイプの場合、傷を受けたのは間違いない事実でしょうが、それを持ち出して、逆に家族に償いを強いるケースが多いようです。
ピエロ家族の中のおどけもの
自分が笑いものになることで、家族の調和を保とうとします。
「鬼滅の刃」ではずばり、我妻善逸です。
鬼殺隊なのに鬼が怖くて逃げ惑いますが、恐怖のあまり気絶すると、突然剣の達人になって一撃で敵を粉砕!
善逸は気がついていませんが、実は自分の強さから逃げたかったのかも……
本来の自分を出すとまわりから嫌われると思い、わざと笑われ役になり、まわりを上に上げて自分を下げることで、家族のバランスを保とうとします。
あえて気配を消す透明人間・ロストワン
胡蝶カナエ・しのぶ姉妹に救い出されたときの栗花落カナヲはあきらかにネグレクトされていました。親から虐待を受けていたせいか、自分の意思を示すことができません。
自分の気配を消して、目立たないようにすることが、カナヲの生存戦略だったのかもしれません。自由になっても、自分で物事が決められずコイントスで物事を決めています。
炭治郎のお世話でやっと、自分の意思で物事を決めることができました。
まとめ
アダルトチルドレンの類型はこのほかにもありますが、今回はこのあたりで。
少年漫画の設定自体は現実離れしていますが、そのキャラクターたちの内面は現実の人間のように、共感できる部分がたくさんあります。