ジャーナリスト笹井恵里子さんが女性ながらも、実際にゴミ屋敷の清掃・整理の作業員として実際に現実を目の当たりにした渾身のルポルタージュ「潜入・ゴミ屋敷」
テレビでゴミ屋敷が放送すると、「あそこまではひどくなくて良かった」と人ごとのように
思ってしまうかもしれません。
でも、あなたもひょっとしたらゴミ屋敷の住人になってしまうとしたら?
ゴミ屋敷状態には誰でもなってしまう可能性があるのです。

 

 

ゴミ屋敷につながるため込み病とは?

 

物があふれて生活できない家に物があふれて生活できなくなる「ためこみ症」という精神疾患があります。
ためこみ症はかって「汚れが気になって手を洗うのがやめられない」「ドアノブや電車のつり革にさわれない」「数を数えてばかりいる」などの症状がある精神疾患の強迫症の1種とされてきました。
それが2013年に米国精神医学会が改訂した精神疾患の国際的診断基準で別の病気として定義されました。
ためこむものは雑誌や書籍、新聞、食料品、空き箱などさまざまで手元にあるものを将来の使用に備えて整理することが出来ず、ゴミの山のように積み重なっていく状態です。
ためこみ症の症状は、大きく3つに分けられます。

・物を大量に集める
・整理整頓ができない
・物への執着が強くて捨てられない

物に対する愛着や執着がものすごく強く、物を捨てることは、体の1部を取られるようだという人もいます。ゴミじゃないと否定する場合もあるそうです。

ためこみ症の基準は障害の程度で見分けます。
・床面がちゃんと床面として機能しているか?
・テーブルがテーブルとして使えるか?
・洗面台やお風呂、台所など生活空間が機能しているかどうか?
というのと前述した3つの特徴を満たしているかを見極め、診断されます。
病気の原因はまだよく分かっていませんが、遺伝的な要素が、大きいと言われています。
遺伝的なかかりやすさを持った人が心理的なショックを経験すると発症リスクが高まるとようです。

 

ゴミ屋敷の住人の意外な実態

 

ゴミ屋敷の住人と言えば、ホームレス1歩手前の社会と隔絶された世捨て人のような人を想像するかもしれません。
ところが実際は違いました。
確かに孤立、孤独という側面はりますが、日中は社会とつながっている人が多く、大手企業に勤めている、医療従事者、教師など社会的地位の高い職種に就いている人の自宅かゴミで溢れかえっているケースが多いのです。
それなりの地位にある人が多く、過剰な収集や整理整頓が苦手といった点を除けば、その他のコミュニケーションや仕事をする機能は保たれているので、周囲から気づかれにくいのです。
自宅は足の踏み場もない状態で診断基準を満たしていますから、やはり病気です。
そのような人の精神科への受診のきっかけは、
・本人は病気とは思って居ないが、何かに困ってというケース。
・家族が精神的に参って相談するケース。
いずれにしてもためこみ症だと思って受診することはほぼないようです。
実は人口の2~6%、20人に1人が「ためこみ傾向」を持つというデータもあります。
病気として注目されてきたのはここ10年です。
単身世帯の増加とも関係があるようで、

・単身世帯が増えている。
・1世帯当たりの人数が減少傾向であることも影響しています。

日本だけの問題ではなく、世界的にゴミ屋敷は問題になっています。

 

ためこむ人にも種類がある

 

「ためこみ行動」と「ためこみ症」は結果的に不必要なレジ袋やゴミを集めることは同じですが、その理由が違います。
ためこみ行動は強迫症の一種でためこまないと安心できないという不安経由で起こるものに対し、ためこみ症はものを買ったときのウキウキする快楽経由で起こるものです。
コレクターであれば、価値があるものを飾る、整理するなどできますが、ため込み症はそれができずに、ため込んでしまいます。

また、PTSD=心的外傷後ストレス障害のためにためこみ行動を行う場合があります。
こころの傷を埋めるようにして、ゴミのシェルターを作って自分の心を守ろうとします。

ためこみ症はうつ病や抑うつ状態を併発していることが多く、いじめ、親の離婚、失業、自身の離婚など心に傷を持つきっかけから起こることが多いのです。

失ったものを埋めるために動物のためこみも起きています。
新型コロナウイルスの感染拡大で在宅時間が伸び、2020年以降は犬や猫を飼う人が増えました。
ペットフード協会の調査によると、新たに飼われた犬は前年比14%増、猫も16%増です。
いやしを求めて飼ったものの面倒を見きれず飼育放棄、数多く飼いすぎて適切に管理できない状態「多頭飼育崩壊」に陥る事例も出ています。
その他、高齢の場合は体力がなくてものが動かせない。
発達障害があって、整理整頓ができないなどの問題があります。

「潜入・ゴミ屋敷」ではゴミ屋敷の生々しい実態が、克明に描かれています。
気になる方は手に取ってみてください。