斎藤章佳著「盗撮をやめられない男」は社会問題としての盗撮に真正面から取り組んだ本です。

痴漢と並んで日本でもっとも多い性犯罪であるにも関わらず、非接触型のために、泣き寝入りになるどころか、被害にあったことさえ気がつかないこともあります。

そして、また逮捕後の加害者の実態から盗撮行為は依存症であることも分かっています。

盗撮に関する実態を紹介します。

 

盗撮の加害者のほとんどはサラリーマン

 

マスコミの報道では医師、教師、警察官など地位や責任がある人の盗撮が取り上げられますが、加害者のほとんどがごく普通の会社員です。

最近取り上げられるのはアスリートの肌に接近する盗撮ですが、現行の「迷惑防止条例」では下着や裸の盗撮は犯罪として立証できますが、ユニフォーム姿を撮るのは罪になりません。

盗撮の年間の総数は2019年で約3900件でした。これはあくまで検挙された分で実際にははるかに捕まっていない人が多く、加害者のアンケートしたところ盗撮をするのは週に2,3回被害者の数も1人の盗撮犯に1000人と言われています。

スマホの普及で誰もが日常的にカメラを持ち歩けるようになり、しかも怪しまれなくなり、

誰もが簡単に盗撮できるようになって、犯行が急増するようになったと言われています。

盗撮するのは1位が駅の構内、と電車内。2位がショッピングモール。

見ず知らずの人が行き来しても不自然ではない場所です。

女性ならばいつでもどこでも盗撮が狙っていると言っても過言ではないようです。

 

盗撮をはびこらせる日本社会

 

盗撮にのめり込んでしまうきっかけは、軽い興味本位から、スマホのカメラは標準で音が出る仕様になっていますが、音が消せるアプリも普及しています。

Amazonなどで簡単に盗撮できるグッズも販売しており、通常は探偵の調査道具ですが悪用されています。

ネットでは盗撮掲示板があり、素人が盗撮した映像・画像が気軽に見られることが「自分でもできるかもしれない」という出来心を起こす要因になっています。

盗撮犯は覗いた女性の肉体を「モノ化」することで楽しんでいるようです。

被害者をモノ化する加害者はかつていじめ、虐待で自分がモノ化された被害者であったケースも多いようです。

 

盗撮依存症とは?

 

盗撮もまた薬物、アルコール、ギャンブルなどと同じように「わかっちゃいるけどやめられない」「もうどうにも止まらない」という依存性の一種であることが分かっています。

分類的には特定の行為が止められない行為依存になります。

トリガーは第1にスマホ、第2に撮る対象となる女性です。

もともとは、自分がエッチな気分に浸るために盗撮していたのが、段々と盗撮自体が目的となり、撮れる女性が現れたら、「ここで撮らなければ男が廃る」というような獲物の狩るハンターのような気分になってシャッターを押すようになるのです。

 

万引きとの共通点

 

「万引き依存症」の著書でも知られる斎藤氏は、盗撮と窃盗症には共通点があると言います。

まず多くの盗撮は撮った映像を転売するとか、人に公開するわけでもありません。盗撮犯は「盗撮すると決めて実行するまでがスリルがあってたまらない」と語ります。常習化すると脳内に快楽物質ドーパミンが分泌されて、すでにゲーム感覚になってやめられなくなっています。最終的には「いつか撮り溜めたものがなくなってしまうのではないか」という枯渇恐怖のために「ため込み行動」をとるようになります。

窃盗症が万引きしたものを部屋に置いたまま腐らせるように、盗撮犯も撮りためた盗撮画像を見返すこともなくどんどん蓄積するようになります。

 

盗撮犯の心理は

 

盗撮犯だけでなく、痴漢、窃盗を繰り返す人は、問題行動を繰り返すための本人とって都合のいい認知の枠組みを持っています。

それは「暗黙理論」と呼ばれ、盗撮加害者自身も自覚していません。

盗撮犯の思いこみは、

・相手に気づかれない限り、相手を傷付けないから許される。

・ネットで盗撮画像が出回っており、簡単に盗撮できる。

・痴漢行為と比べて、相手に触れないからそれほど大きな犯罪ではない。

相手に触れる痴漢行為と比べると、軽い犯罪だと認識しているようです。

さらに、

・スカートを履いているということは盗撮されてもオッケーということだ。

・下着が見えそうな服装の人は心の中では盗撮されたいと思っている。

・ビデオカメラやカメラで撮ってはいけないが、スマホのカメラだったらいい。

というとんでもない思いこみを持っています。

さらには

「コチラをチラチラ見ているといことは盗撮されたいと思っているに違いない」

と完全に妄想にすぎないことを思っていて、盗撮犯と被害者は全く違う世界に生きているとしか思えないほど、全く別の次元でものごとを考えています。

もともとは「女性とつき合いたい」「コミュニケーションをとりたい」「女性の体に触れたい」と思いながら、それができないために、代償行為としての性的逸脱行動によって、自分は満足していると思い込む「すり替え充足」を行っています。

全く理解不能ですが、日常のどこに盗撮犯がいるか分からないので、警戒するしかありません。