多くの生き物が遺伝子を残すためだけに性行為を行うのに、なぜ人間だけが快楽のためだけに性行為を行うようになったのか? それをテーマにした一冊が、ジャレド・ダイアモンド著『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』です。

 

 

 

子育てには父親の存在が欠かせないマイホームパパ仮説

 

象や鹿など元々、多くの哺乳類の胎児は既に母親のお腹で成長して、産まれるとすぐに自立しますが、人間が自力で生きられるようになるには何年もかかります。

人間の子育ては哺乳類よりもツガイの鳥類に近いようです。ツガイの鳥の片方が何らかのトラブルで死んでしまった場合、雛が育たずに死亡する確率が高くなります。つまり夫婦が揃ってこそ子育てが成り立つのですが、父親が子育てする期間に家に引き止めていないと、他のメスを求めて旅立っていきます。実際にアメリカイソシギという鳥の一部のオスは、メスが妊娠・出産の最中に半径数百メートル先のメスの元で新たに家庭を作ります。

人間の場合、夫が子育て中に逃げ出さないために、お楽しみのために性行為を年中行えるように進化したのではないか?と言われています。
しかしながらそれが、不倫や浮気に繋がっています。

 

優秀な遺伝子を遺すために妻が不倫するたくさんの父親仮説

 

一方「マイホームパパ」説と真っ向ぶつかるのが「たくさんの父親説」です。元々、猿・ゴリラなどの類人猿系の哺乳類は、メスが発情期になると、お尻が真っ赤になったり、フェロモンを出したりして、妊娠期であることをアピールしてきました。多くの猿類は、ボス猿一匹で多くのメスを従えてハーレム状態にして、自分の遺伝子を少しでも多く残そうとします。

しかし、新ボスが旧ボスを倒す下克上が起こると、ハーレムは新ボスに乗っ取られます。

そのとき、新ボスの遺伝子以外の血を絶やすために、旧ボスの子供達は皆殺しにされるといいます。新ボス猿の遺伝子戦略では当然の行為と言えますが、またボス猿の交替が起こると子猿が死んでしまいメス猿にとってはリスクとなります。リスクヘッジのために多様なオス猿と交配して、多数の遺伝子の子猿を産む必要があります。

そのために、発情期が分からないように進化し、ボス猿が他のメスの所へ行っている間にこっそり他のオス猿を呼び込んで、浮気してちゃっかり他の遺伝子の猿も産むようになったといいます。

 

まとめマイホームパパとたくさんの父親の交互に発展

 

著者は、人類はこうして「マイホームパパ説」の一夫一婦制とハーレムや乱婚型の制度を、進化の度に交互に行って、現在のようないつでも性行為可能のように進化したのではないかと結論づけています。
生物学的に見ると、男女共に浮気や不倫をするのは自然なことで、パートナーを持つ人は重々その可能性があることを自覚し、警戒を怠らないのが一番です。もちろん、
自分の浮気もダメですよ。