虐待と聞くと、身体的暴力やネグレクト(育児放棄)を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、最近では 心理的虐待 という形で子どもの心が深く傷つくケースが増えています。フリーライターの姫野桂氏の著書 『心理的虐待~子どもの心を殺す親たち~』 では、両親の不仲も心理的虐待の一因になると指摘されています。

特に、 浮気や不倫が原因で夫婦関係が悪化すると、それが子どもに与える影響は計り知れません。 夫婦のいさかいや信頼関係の崩壊を目の当たりにすることで、子どもは安心感を失い、自己肯定感が低くなるだけでなく、将来の恋愛や結婚に対する不安を抱えることになります。

本記事では、 両親の不仲が子どもに与える心理的影響と、浮気・不倫がもたらす問題点 について掘り下げていきます。

 

両親の不仲と浮気・不倫が子どもに与える心理的虐待の影響

 

 

心理的虐待は心だけでなく脳にもダメージを与える

 

WHO(世界保健機関)は、 「チャイルド・マルトリートメント(不適切な養育)」 を以下の4つに分類しています。

  1. 身体的虐待
  2. 性的虐待
  3. 心理的虐待
  4. ネグレクト(育児放棄)

この中でも 心理的虐待は目に見えにくく、大人が無自覚に加害者になりやすい という特徴があります。たとえば、両親の喧嘩やDV(家庭内暴力)を目の前で見ることも、心理的虐待に該当する のです。

特に、浮気や不倫が原因で夫婦関係が悪化し、日常的に怒鳴り合いや暴言が飛び交う家庭環境 は、子どもに深刻な影響を与えます。

 

脳の変形を引き起こす可能性

 

研究によると、両親の激しい喧嘩を見たり、親からの暴言を受けたりすると、子どもの脳に物理的な変化が生じる ことが分かっています。

  • 視覚野の収縮(DVや両親の喧嘩を目の当たりにすることで発生)
  • 聴覚野の変形(親の暴言を頻繁に聞くことで発生)

浮気や不倫によって家庭が崩壊し、親が 「お前のせいでこうなった」「お母さん(お父さん)のせいで家族が壊れた」 などと子どもに責任を押し付けるような発言をすると、子どもは深く傷つき、成長後の人間関係に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

浮気・不倫が子どもに与える影響

 

浮気や不倫の問題は、夫婦の間だけでなく 子どもの心理的安全性 に大きな影響を及ぼします。子どもにとって両親は 「世界の基盤」 です。その基盤が揺らぐことで、子どもは大きな不安を抱えることになります。

  1. 愛情への不信感が生まれる

浮気や不倫が原因で両親が揉める姿を見た子どもは、「愛は壊れるもの」「人は裏切るもの」 という考えを持ちやすくなります。これは将来的に、恋愛や結婚に対する不安や不信感につながりやすくなります。

たとえば、「結婚しても幸せになれない」「どうせ相手に裏切られる」 という考えが根付くことで、パートナーとの関係を築くのが難しくなることも。

  1. 自己肯定感の低下

親のどちらかが浮気や不倫をしていた場合、もう一方の親が 「お父さん(お母さん)が浮気したのは、お前のせいかもしれない」 などと責めることがあります。

また、子ども自身が 「自分がもっといい子だったら、両親は仲良くしていたかもしれない」 と自責の念を持つこともあります。こうした経験が積み重なると、自己肯定感が低下し、社会生活や人間関係に影響を与えかねません。

  1. 適切な愛情表現がわからなくなる

両親の関係が崩れる過程を目の当たりにすると、子どもは 「どのようにパートナーと接すればいいのか」 がわからなくなることがあります。

特に、両親のどちらかが浮気を繰り返していた場合、子どもは「愛=裏切り」だと認識する可能性があります。 その結果、恋愛や結婚において誠実な関係を築くのが難しくなったり、逆に過剰にパートナーを疑ったりする傾向が出ることもあります。

 

心理的虐待を避けるためにできること

 

両親の関係がどうであれ、子どもに安心感を与えることが最優先 です。そのために、以下の点に注意しましょう。

  1. 子どもの前で喧嘩をしない
    → 浮気・不倫の問題で話し合うときは、子どもの前ではなく別の場所で。
  2. 子どもに責任を押し付けない
    「あなたのせいでこうなった」 という言葉は絶対にNG。
  3. 子どもを条件付きで否定しない
    「いい子にしないとパパ(ママ)に嫌われるよ」 などの言葉は避ける。
  4. 親同士の問題と子どもを切り離す
    「パパ(ママ)は浮気したけど、あなたのことは愛している」 ということを伝える。
  5. 「大人の責任」であることを明確にする
    「これは私たち大人の問題だから、あなたが気にすることじゃないよ」 と伝える。

まとめ

 

浮気や不倫が夫婦関係を悪化させるのはもちろんのこと、それが 子どもに与える心理的影響は想像以上に大きい ものです。特に、心理的虐待として脳にダメージを与えることもあるため、 親同士の問題を子どもに背負わせないことが重要 です。

大切なのは 「子どもは親の所有物ではなく、独立した存在である」 という意識を持ち、子どもの心の安全を守ること。たとえ夫婦関係に問題があっても、 子どもにとって安心できる環境を整えること が何よりも大切なのです。