2025年3月、フランス・パリの名門美術館で驚くべき事件が発生した。展示されていた有名な印象派の絵画が、一夜にして姿を消したのだ。美術館の厳重な警備をかいくぐり、まるで煙のように消えた名画。防犯カメラには何も映っておらず、窃盗の痕跡すら残されていなかった。
しかし、この完璧な犯罪にも小さな綻びがあった。名探偵の鋭い洞察力によって、巧妙なトリックが次第に暴かれていく——。
「鍵のかかった美術館」からの消失
盗まれたのは、19世紀の著名なフランス人画家による印象派の作品「夜明けの幻想」だ。推定価値は約20億円。美術館の中心ホールに展示されており、厳重なガラスケースと警報システムに守られていた。
事件発生は2025年3月12日の未明。朝の開館時、警備員が異変に気づいた。展示ケースには何の異常もなく、鍵も破られていない。にもかかわらず、絵画だけが忽然と消えていたのだ。
驚くべきことに、美術館の防犯カメラには「誰も何もしていない」映像が映っていた。警察は即座に調査を開始したが、内部犯行の可能性も含め、捜査は難航。そこで、フランスの有名な探偵 シャルル・ルグラン が捜査に加わることになった。
名探偵の推理——「あり得ないはずの方法」
ルグランは現場を徹底的に調査した。展示ケースのガラスには指紋も付着しておらず、鍵は厳重に保管されていた。出入り口の防犯システムも正常に作動しており、閉館後に誰かが侵入した形跡はない。
しかし、ルグランはある「違和感」に気づいた。
「絵画の額縁には、微細な傷がある……?」
通常、名画は定期的にメンテナンスされ、ほこり一つない状態に保たれている。しかし、額縁の裏側には、ごくわずかな傷と、肉眼では見えない微細な繊維の付着があった。
「もしかすると、これは……」
驚愕のトリック——盗まれた絵画は「すり替えられていた」
ルグランは、美術館が保管している絵画の修復記録を調査。すると、驚くべき事実が判明した。
実は、事件の約2週間前に「夜明けの幻想」は修復のために一時的に取り外されていた。その際、何者かが 精巧な贋作 を作り、本物とすり替えていたのだ。
つまり、事件当日に盗まれたのは すでに贋作と入れ替えられた後の作品 だった。本物は、すでに犯人の手によって持ち出されていたのだ。
犯人は「修復師」だった
ルグランは、美術館と契約している修復師に目をつけた。彼らは特定の絵画を修復するために、作品を一時的に預かることが許されている。そして、贋作を作るためには、プロの修復技術が不可欠だ。
調査の結果、数ヶ月前から美術館と契約していたある修復師が、過去にも偽造絵画に関与していたことが判明。さらに、彼のアトリエを調査したところ、驚くべき証拠が発見された。
そこには、「夜明けの幻想」の贋作を制作する過程の記録や、筆跡が一致するスケッチが保管されていたのだ。そして、隠し倉庫から 本物の「夜明けの幻想」 も発見された。
犯人は、美術館の修復作業を利用して贋作をすり替え、本物を持ち出すという大胆な計画を実行していた。しかし、ルグランの鋭い観察力によって、そのトリックは暴かれたのだった。
美術品犯罪と探偵の役割
この事件は、美術界における贋作と盗難の問題を改めて浮き彫りにした。世界中で多くの名画が盗難に遭い、行方不明になっている。
探偵は、単なる事件の解決だけでなく、「なぜこの犯罪が起きたのか?」を見極める役割も担う。美術品の価値が高騰し続ける現代、こうした犯罪は今後も後を絶たないだろう。
ルグランは、事件解決後にこう語った。
「犯人は完璧な犯罪を企てたつもりだったが、”ほんの僅かな違和感”が、すべてを崩壊させることがある。どんな巧妙な犯罪も、真実の前では無力なのさ」
——まるで一篇のミステリー小説のような事件だった。