不倫と聞くと、「裏切り」や「道徳に反する行為」として社会的に強く非難されがちです。しかし、そんな“不倫”が法律上では「犯罪」にならないのはなぜでしょうか?
この記事では、人気ミステリー作家であり、現役の弁護士でもある五十嵐律人氏の著書『現役弁護士作家がネコと解説 ニャンコ刑法』から、不倫と刑法の関係についてわかりやすく解説します。
不倫は犯罪ではない?ニャンコ刑事が目撃した事件
夜な夜な張り込みに勤しむニャンコ刑事。
彼の目に飛び込んできたのは、なんと自分の妻と他のオス猫のラブラブな現場!
怒り心頭のニャンコ刑事は、すぐに警察バッジを取り出して「不倫罪で逮捕する!」と叫びます。
しかし――残念ながら、「不倫罪」なんてものは日本の刑法には存在しません。
では、なぜ不倫は逮捕されないのでしょうか?
不倫は民事上「違法行為」だが、刑事では「合法」?
まず、不倫は刑法上の犯罪ではありません。しかし、民法上では違法行為に該当することがあります。
その根拠となるのが、**民法第709条(不法行為による損害賠償)**です。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護されるべき利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
この「法律上保護されるべき利益」には、夫婦の平穏な家庭生活が含まれます。
つまり、配偶者に不倫された側は、慰謝料を請求できるのです。
一方、刑法には「不倫」や「不貞」を罰する条文はありません。かつては「姦通罪」という法律がありましたが、これはすでに廃止されています。
なぜ不倫は刑罰の対象にならないのか?「罪刑法定主義」とは
ここで重要になるのが、「罪刑法定主義」という考え方です。
これは、日本国憲法第31条に明記されています。
何人も、法律に定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。
つまり、法律に明文化されていない行為を罰することはできないという原則です。
不倫は確かにモラルや道徳には反しますが、刑法上で「犯罪」と定義されていないため、警察が逮捕したり、裁判で刑罰を科すことはできません。
この考え方には、次のような意義があります:
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刑罰は自由や財産を奪う、非常に重い制裁である。
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恣意的に刑罰を科さないよう、法的に厳密な基準が必要。
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国民の自由と権利を守るための最小限の制限にとどめるべき。
そのため、倫理的に間違っている行為すべてが、法律違反=刑罰の対象になるわけではないのです。
まとめ:不倫は悪だけど、捕まらないのにはちゃんと理由がある
ニャンコ刑事のように、感情に任せて「逮捕だ!」と叫びたくなる気持ちはわかります。でも、法律の世界では**「書いてあること」しか罰せない**という厳格なルールがあります。
これが「罪刑法定主義」です。
不倫された側は、民法に基づいて慰謝料請求などの民事的措置を取ることはできますが、刑事事件にはなりません。
もっと法律についてわかりやすく学びたい方には、五十嵐律人さんの『ニャンコ刑法』がおすすめです。
猫たちが活躍するコミカルな漫画形式で、法律初心者にもスッと入ってくる一冊になっています。
ニャンコと一緒に、法律の世界を少しのぞいてみませんか?
法律の仕組みを知れば、感情だけに流されず冷静に行動できるようになりますよ。