「もう二度と関わらない」と思っていた元恋人。
それなのに、時間が経つと不思議なことに、あの頃の嫌な記憶は薄れ、良かった思い出ばかりが蘇ってくる。人は“過去を美化する生き物”です。別れた理由を忘れ、都合の良い部分だけを覚えてしまう――それが新たなトラブルの火種となることも少なくありません。
探偵業をしていると、「相手が元カレ(または元カノ)と浮気していた」というケースは決して珍しくありません。
別れた当時は喧嘩ばかりだったり、価値観が合わなかったりして、もう関わることはないと思っていたはずです。
ところが数年経つと、時間のフィルターが悪い思い出を削り取り、「昔は優しかった」「本当は良い人だった」と心が勝手に書き換えられてしまう。これは心理学で“ポジティブ記憶バイアス”とも呼ばれる現象で、過去を理想化してしまう人間の特性です。

そして現実には、今のパートナーとの関係がマンネリ化している。
会話が減り、生活がルーティン化し、刺激も減る。そんな時にふとSNSで元恋人の投稿を見かける――それが運命の再接続ボタンになります。
「懐かしい」「元気にしてるのかな?」と軽い気持ちで“いいね”を押したり、メッセージを送ったりする。そこから関係が再燃する確率は、想像以上に高いのです。
昔なら偶然再会しない限り、連絡を取る機会はありませんでした。
しかし今はInstagramやLINE、X(旧Twitter)などで簡単に繋がれる時代。物理的な距離よりも、ワンタップの距離のほうが危険です。
「たまたま連絡が来ただけ」「思い出話をしただけ」――その油断が、一線を越えるきっかけになります。
実際の浮気調査でも、再会から関係が深まるまでの期間は驚くほど短いです。
一度気持ちが盛り上がると、過去の感情が一気に蘇り、恋愛初期のドキドキが再現されます。これを“再恋愛効果”とも呼びます。
久しぶりに会った元恋人が、当時より大人びて見えたり、余裕を感じたりすると、現実逃避のように惹かれてしまうのです。
しかしその「懐かしさ」は、真実の愛ではありません。
時間が作り出した幻想です。あの頃の相手も、あの頃の自分も、もう存在しません。
過去を美化しすぎると、現実とのギャップに苦しむことになります。
再燃した関係が長続きするケースは極めて少なく、結局は同じ理由で再び別れるというパターンが多いのです。
恋愛の記憶は、香水のようなもの。
時間が経つほど、悪い匂いは消え、甘い香りだけが残ります。
しかしそれに惹かれてもう一度蓋を開ければ、あの時と同じ刺激が戻ってくるそれが“元恋人との浮気”の怖さです。
一時の懐かしさが、今の信頼や家庭を壊してしまうこともあります。
過去に心を引かれそうになった時こそ、自分の現在を見つめ直すこと。
それが、同じ過ちを繰り返さないための最も確実な方法です。

