養育費の不払いは、元夫の勤務先を把握できると給与差押えにつながります。一方で自営業や社長が“役員報酬を圧縮”するケースでは別ルートの把握が重要。現実的な対策を解説。

養育費の不払いは「職場を押さえる」と強い
養育費が滞納されると、多くの方が「連絡しても逃げられる」「口約束で終わる」と消耗します。ここで重要なのが、元夫の勤務先(給与の支払者)を特定できるかどうかです。勤務先が分かれば、条件が整った場合に給与債権の差押え(強制執行)を検討でき、回収が“仕組み化”しやすくなります。
また、裁判所を通じて債務者の財産情報を第三者から取得する「第三者からの情報取得手続」では、勤務先情報・預貯金口座情報などを得られる仕組みがあります(情報取得自体は“調査”で、回収は別途差押えが必要)
ただし「自営業」「法人社長」は職場だけでは詰まることがある
ここからが落とし穴です。相手が会社員なら比較的ルートが見えますが、相手が自営業や会社経営者(社長・役員)の場合、話が急にややこしくなります。
現場で実際にあるのが、
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法人を持っていて実態は黒字
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しかし自分の役員報酬(給与)を極端に低くする
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再婚して子どもがいるなど「扶養が増えた」事情を前面に出す
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会社の経費で生活レベルを維持(高級車、交際費、旅行等)
という“見た目は余裕、書類上は低収入”のパターン。あなたが挙げた「会社のお金でベンツに乗りながら、養育費は月1万円」という構図も、この類型の延長線上にあります。
ただ、ここで大事なのは「役員報酬を下げた=必ず減額が通る」ではない点です。経営者が自分で報酬を動かせる立場で、タイミングや合理性に不自然さがある場合、減額前の収入を基礎に判断したり、実質収入(経費の足し戻し等)で見たりする議論が現実にあります。
“社長の低収入”に対抗する現実的な見立て
社長・自営業のケースでポイントになるのは、「給与明細の数字」ではなく、実態として使えるお金の流れです。例えば、事業の確定申告や会計上の経費でも、家庭の生活費に近い支出が混ざっていることがあります。そうした部分を加算(足し戻し)して“実質的な収入”を見ていく考え方が整理されています。
さらに、意図的な減収が疑われる場合に、潜在的な稼働能力(本来得られる収入)を前提に議論する考え方もあります。
職場以外に狙うべき「回収ルート」
職場が弱い(または不存在に近い)ときは、回収の入口を複線化します。代表例は以下です。
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預貯金口座:口座情報を得て差押えへ(情報取得→差押えの順)。
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売掛金(取引先からの入金):自営業の場合、給与よりこちらが刺さることがあります。
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不動産・有価証券等:差押え対象の選択肢になる(情報取得手続の対象にも含まれます)。
「ベンツに乗っている」も有力な手がかりですが、ローン・リース・法人名義だと“資産”ではない場合もあります。見た目の派手さだけで突っ込むと空振りするので、名義や支払い主体まで丁寧に分解するのがコツです。
探偵が現実的にサポートできること
養育費の回収そのものは弁護士領域になりやすい一方で、探偵が力を出せるのは「相手の経済実態の入口を特定し、証拠として整える」部分です。例えば、
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勤務先・事業実態・主要な活動拠点の把握
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取引先や入金が発生しそうな動線(店舗、現場、定例訪問先など)の特定
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生活水準を示す客観材料(居住実態、車両の利用状況、同居家族構成の変化等)の整理
こうした材料がそろうと、回収ルートの選定や主張の組み立てが現実的になります。
注意点:差押えには「債務名義」が要る
最後に重要な注意点です。差押えには原則として、判決・調停調書・審判調書・強制執行認諾文言付きの公正証書などの“債務名義”が必要になります(口約束や当事者間の合意書だけでは足りないことが多い)。
トラスト探偵事務所

