探偵業は、一見すると自由な業務形態に見えますが、実際は「探偵業法」と呼ばれる法律によってルールが決められています。探偵業法を守った業者でないと、利用する際にトラブルになることがあるので要注意です。今回はそんな探偵業法について、詳細を解説していきます。

 

 

探偵業法とは

 

探偵業法とは、適正な探偵業、探偵に関わる個人の権利・利益の保護を目的に制定された法律です。2007年に施行された新しい法律でもあります。探偵業に従事する場合は、探偵業法に従って業務を行うことが必要です。

 

探偵業法で義務付けられている内容

 

探偵業法で義務付けられている内容は多岐に渡りますが、中でも重要な点が下記のものです。

 

・開業時の届出

・依頼内容の精査

・書類の授受

 

開業時の届出

 

探偵業を始める場合、開業時に届出を提出することが義務付けられています。探偵業に該当する仕事は、「他人の依頼を受けて、人の所在又は行動について、面接による聞き込み、尾行、張り込みを行う仕事」になります。人探しや身辺調査など、個人を調査する仕事に関しては、探偵業に該当してきます。

 

ただし、新聞社や通信社などの報道機関に関しては、探偵業法の適用除外対象となっているため、届出を行う必要はありません。

 

依頼内容の精査

 

探偵は依頼を受けて人の所在や行動を調査することができますが、すべての依頼を受けて良い訳ではありません。

 

探偵業法の第6条にて、犯罪や差別の手助けとなるような依頼は、探偵であっても引き受けてはならいと規定されています。たとえば、人探し調査の際に、依頼主から「別れた彼女を探して欲しい」と依頼を受けたとします。どのような原因で分かれてしまったかにもよりますが、多くの探偵はこの手の依頼を受けるのに慎重になります。というのも、男女の恋愛関係に基づく人探しは「ストーカー」である可能性があるためです。ストーカーは犯罪行為になるので、探偵が手助けはしてはいけないものです。

 

また、探偵の調査で多い「身辺調査」でも、特定の項目に関しては調べることがNGです。たとえば、「部落出身者」であるかどうか調べることは、憲法・法律に反することです。部落出身者であることが、身辺調査中に判明したとしても、依頼主にその事実を報告することは禁止されています。

 

書類の授受

 

探偵は依頼主と契約する際に、下記の書類を取り交わすことが義務付けられています。

 

・重要事項説明書

・誓約書or調査利用目的確認書

・契約書

 

重要事項説明書では、下記の内容を記載することが探偵業法で定められています。

 

①探偵業者の商号、名称又は氏名及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

②第四条第三項の書面に記載れている事項

③探偵業務を行うに当たっては、個人情報の保護に関する法律、そのほかの法令を遵守するものであること

④第十条に規定する事項

⑤提供することができる探偵業務の内容

⑥探偵業務の委託に関する事項

⑦探偵業務の対価その他の当該探偵業務の依頼者が支払わなければならない金銭の概算額及び支払時期

⑧契約の解除に関する事項

⑨探偵業務に関して作成し、又は取得した資料の処分に関する事項

 

重要事項説明書は、単に書類を渡すのみでなく、探偵業者が必ず内容を説明する必要があります。

 

誓約書、または調査利用目的確認書は、正式名称を「調査の結果を犯罪行為、違法な差別的取り扱いその他の違法な行為のために用いない旨を示す書面」と呼びます。この書類を取り交わすことで、依頼主側も調査結果を犯罪行為や差別行為など、違法行為に用いないことを約束することになります。

 

契約書は、確定した契約内容を説明する書類で、こちらも探偵業者が依頼主に説明することが義務付けられています。

 

探偵業法を違反した場合の罰則

 

探偵業法を違反した場合、下記の罰則が科せられます。

 

・指示(行政指導)

・営業停止処分(1年以下の懲役、または100万円以下の罰金)

・廃業処分(1年以下の懲役、または100万円以下の罰金)

 

探偵が調査業務の過程で、住民とトラブルを起こしてしまったり、トラブルにあった人が警察に届け出た場合、最初に科される罰則が「指示(行政指導)」です。指示では、トラブルの原因となった調査方法を止めるよう指導したり、該当エリアで従事していた従業員を外すよう勧告したりなど、主に「探偵業者の自主的な是正」を促すものになります。ただ、指示は刑事罰とはならないため、探偵事務所が営業できなくなるような事態にはなりません。

 

指示を受けたにも関わらず、業務内容を是正しない状態が続くと、営業停止処分、廃業処分が下されます。営業停止、廃業につながるラインは「詐欺行為などの違法行為に手を出していた場合」であることが多いです。営業停止処分は、6ヵ月以内の探偵業の禁止に加えて、刑事罰として「1年以下の懲役、または100万円以下の罰金」が科されます。

 

違法行為が悪質なもので、重大犯罪につながるものだと判断されたら、営業停止よりも思い「廃業処分」が下されます。廃業処分になると探偵業の資格が剥奪されるので、新たに探偵業を行うことが困難になります。

 

まとめ

 

探偵業法は、探偵業を行う上で必ず守らなくてはいけないルールです。探偵業法に違反した業者は、業務停止や廃業処分など厳しい処分が科せられることもあります。探偵業者を利用する際は、今回解説した探偵業法のルールを守っている業者かどうか、必ずチェックするようにしましょう。