前回は、虐待というほどでもないけれど、日常の何気ない行為が子供の脳を萎縮させるマルトリートメントについてお伝えしました。

今回はその解決編で、どうしたらそのマルトリートメントとを軽減できるかお伝えします。

その前に軽視されがちな精神的心理的マルトリートメントの恐ろしさを解説します。

 

家庭内のゴタゴタで子供の脳が傷ついている・その2

 

不用意に言った言葉が子供を傷つけている

 

ちょっとしたミスやつまずきで、バカとかクズとか子供が傷つく言葉を投げかけていませんか?

「あんたなんか産むんじゃなかった」
「本当に何をやらせても役に立たん。生きてても仕方がない」

子供の存在そのものを否定するような言葉を躊躇なしに浴びせる親もいます。
ここまでの酷い言葉じゃなくても、罵るような言葉がついつい出てしまうことは誰にでもあります。

兄弟を比較しすぎるのもよくありません。
「お兄ちゃんはできるのにあなたは何でできないの?」
親戚の前で兄ばかり褒めて弟を無視するというのも状況によってはマルトリートメントになります。

週刊少年ジャンプ連載の人気漫画「僕のヒーローアカデミア」では、炎を使うヒーローの家に生まれたのに、その能力がなく、無理をして炎を使ったために大やけどを負い、その心の傷から悪人になってしまう「荼毘」というキャラクターがいます。

ヒーローになるべくずっと厳しい訓練を続けていたのに、才能のある弟が生まれたことで父親ヒーローに構ってもらえなくなり、心の傷が深まります。

さらに自分に向けられた言葉でなくても、片方の親が違う親をひどく中傷したり、祖父母が両親の悪口を言ったりするのを聞くと、子供は大好きな親が卑しめられることで悲しむだけでなく血のつながりを悲観し、自分まで否定された気になります。

何か子供がいけないことをした場合でも、人格を否定するような言葉を使えば、教訓を学ぶのではなく、「自分はダメな人間なのだ」と言う自己否定の心が植え付けられます。

何をするにも自信が持てなくなり、人の顔色をうかがう、その場しのぎの嘘やでまかせを頻繁に口にするようになります。

子供にとって親の評価は絶対的なものです。
大人になれば、冷静に受け止められるかもしれませんが、 親から植え付けられた無力感は子供の心に深く根付きます。

子供を傷つける言葉はじわじわと子供の心を蝕み、成長ののびしろを縮めてしまう恐れがあります。

 

子供の前での両親の暴力・暴言

 

直接子供に暴力を加えるわけではありませんが、両親の間の DV を子供が目撃すれば、子供と脳の発達に悪影響があることか分かりました。

配偶者には暴言を吐いたり、暴力を振るっても、子供はかわいがっているという親の言い分があります。

しかし、子供の前で DV をしているだけで子供も被害者になっているのです。

また自分が直接被害を受けてないことから、自分も加害者であると言う罪悪感を委託場合もあります。こうした経験もトラウマになり子供の脳と心にダメージを与えます。

 

言葉のDVの方が脳へのダメージが激しい

 

門前DVが元で生じるトラウマはどのようなダメージを受けるか実験が行われました。
脳の萎縮率を見てみると、身体的な DVを目撃したよりも言葉による DV の方が実に6から7倍もダメージを受けていたのです。
脳的には体の暴力よりも、言葉の暴力の方がきついという結果が出ました。
外見的には全くダメージがないので見落とされがちですが、

その結果、
・うつ病になる
・他人に対して強い攻撃性を持つ
・感情を表に出せない
・拒食症・自傷行為を行う
・薬物に依存する
・最悪の場合、犯罪や自殺を行う

という恐ろしい結果が待っています。
精神的なマルトリートメントは決して軽い虐待ではないのです。
しかし、立証できる証拠も残らないため、見落とされがちで、やった方は完全犯罪で、しかもまったく自覚もないかもしれません。

マルトリートメントで脳が変形してしまう理由

 

実験によると、性的なマルトリートメントをや面前DVを受けると脳の視覚野が萎縮しています。
その結果視覚による記憶力が低下することが分かっています。
嫌なことを思い出さないために、記憶を呼び起こす視覚野の容積を減少させています。

また暴言によるマルトリートメントを受けると言葉をつかさどる聴覚野の面積が肥大することが分かりました。

暴言を浴びると興奮を伝えるシナプスが必要以上に増えてしまいます。
シナプスは適度に自然に刈り取られる仕組みですが、暴言のマルトリートメントを受けるとそのシステムが崩壊してしまうようです。

そうなると、人の話を聞き取ったり、会話しているさいに、余計な負荷がかかります。
そのせいで、心因性難聴、情緒不安を起こして、人と関わることを恐れるようになります。

このように脳が変化してしまうのは、環境に適応して生き延びようとするためです。

 

まとめ

 

直接的な暴力を受ける方が、ダメージを受けると思いがちですが、 言葉や間接的なマルトリートメントの方が脳にダメージを起こしているというのは衝撃でした。
子供たちの前では言動行動に今以上の配慮が必要のようです。