ほんの些細なことでも萎縮してしまう成長期の脳。

しかも直接的な暴力よりも言葉の方が傷つく。

自分が受けたわけじゃないのに人が傷つけられたり、けなされたりしてもダメージを受けるなんて衝撃です。

一度ダメージを受けてしまった脳はもう回復しないのでしょうか?

また脳がダメージを受けないようにするにはどうすればいいのでしょうか ?

子供の脳を傷つけるマルトリートメントに関する考察。

第3回目の今回は具体的な対策をかんがえます。

 

 

子供の脳は傷ついても回復する

 

最近の脳科学研究で脳の傷はいやされることが分かりました。

子供の脳だけではなく、大人の脳でも再生回復ができる可能性があることが証明されています。

トラウマとの関係が深いといわれる慢性疲労症候群の成人には認知行動療法を行うと大脳辺縁系の前帯状回の容積が回復しています。

幼少期のトラウマを持つ人が認知行動療法や薬物療法を行ったところ、扁桃体の過活動が低下し、前帯状皮質背側部や背外側前頭前皮質、海馬の働きが活発になります。

薬物療法でPTSD患者の海馬の容積が治療前に比べて増加しました。

大人でも回復するので、子供ならさらにその回復の効果が期待できます。

1日も早く適切な治療を施すことが、脳と心が回復していくために必要です。

 

子供のトラウマに対する心理療法

 

支持的精神療法

深いトラウマを持った子供はパニック症状を起こします。

今辛い状況から脱出できていても、過去の苦しかった思い出がフラッシュバックして、子供の心を苛みます。

トラウマを抱えている子供は自己肯定感が低く、自らを責めることに感情が向いてしまいます。 また自分への否定感情を周囲の支援を拒否することによって表現する子供もいます。

援助者は繰り返し子供を励まして、しっかりとした信頼関係の土台を築くことが大切です。

子供の心を柔らかくし、自分は悪くないと認知の歪みを取り除きます。

・曝露療法

パニックが起きるのは、過去の体験を自分の中で整理できてないことが原因の1つです。
こうした子供に対しては過去のマルトリートメントを言葉にして話すよう働きかけます。
心の心の傷を癒すためには、原因となっているものを吐き出すことが回復に繋がります。

過去に起きた辛い体験は取り消すことはできませんが、その事実に対する受け止め方は決してひとつではありません。

考え方次第で見方をいくらでも変えて、客観的、前向きに過去を捉え直すことができるようになります。

・遊戯療法

言葉を自由に喋れない幼児は、辛い出来事を、遊びなどの行為の中で象徴的に表現する場合があります。

遊びはトラウマや苦しみを表現しそれを解放するためのツールとしてとても有効です。

マルトリートメント被害にあった子供は、心を閉じており、なかなか言葉を出せません。

そういう場合に遊戯療法は効力を発揮します。

 

幼少期に愛情が形成されないと愛着障害に……

 

子供に対するマルトリートメントと愛着障害には深い因果関係があります。

子供時代に愛着をいかにその後の人生に大きく関わってきます。

愛着には安定型、回避型、抵抗型、混乱型の4つのタイプがあります。

親が適切に子供に愛情を注いでいると安定型になります。

親が子供の安全基地の役割を果たし、情緒も安定しています。

ところがうまく愛情が形成されないと、回避型、抵抗型と言った人とのコミュニケーションを避けたり、言われても抵抗をするタイプになります。

変わっっているのは4つめの方の混乱型です。
混乱型は回避型、抵抗型の行動も入り混じっており、時折、ぼーっとするなどの行動も見られます。

母親と接していても混乱や不安が治りません。

驚いたことにマルトリートメントを経験した子供の6割から8割がこの混乱型です。
親自身が幼少期のトラウマ体験を解消できずにいて、子供とのコミュニケーションが適切でなく不十分であることが原因だと言われています。

 

愛着形成のプロセス

 

幼少期に親とのコミュニケーションとスキンシップが十分であれば、 愛情がしっかりと形成されて 「自分は守られ愛されている」というイメージを持って安心感を保てるようになります。

愛情が形成されれば、親がいないような場合でも安心感をしっかり保つことができるようになります。

そして、親以外の人と接しても

・親と同じように自分に接してくれる相手は安心できる 。
・自分を助けてくれる人は親以外にもいる。

そのように感じることができれば、他人とのコミュニケーションも積極的にできるようになり、一人で物事に対処していく力や技術を身につけ社会で自立していくことができるようになります。

 

まとめ

 

厚生労働省が作成したチラシ
「子どもを健やかに育むために~愛の鞭ゼロ作戦」では次の5つのポイントが紹介されています。

子育てに体罰や暴言を使わない
子供が親に恐怖を持つと SOS を伝えられない
爆発寸前のイライラをクールダウン
親自身が SOS を出そう
子供の気持ちと行動を分けて考え、 育ちを応援

古い育児の常識に縛られていては難しいことですが、マルトリートメントとの負の連鎖を食い止めるためにも、子育てに対する意識を変えることが重要のようです。