あいかわらず、途絶えることのない虐待の報道。
コロナ禍で、家族がいっしょに自宅でいることが増えて、さらに虐待が増えているようです。
以前、紹介した友田明美さんの著書「子どものを傷つける親たち」では、「マルトリーメント」の衝撃の事実が伝えられました。
虐待で受けるダメージは、体よりも脳の方が激しいのです。
しかも、直接の暴力よりも、言葉や態度の方がより強く、脳の萎縮を引き起こします。
その影響は人間としての成長を妨げ、成人してからの生活にも悪い影響を及ぼします。
親が自分では気がつかない、子どもに投げかける言葉や態度が、知らず知らず子どもの脳を萎縮させている……
なんとも恐ろしい事実です。
続編「親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる」では、その解決編という位置づけで、親子共々脳を癒やして、虐待の連鎖を断ち切る道を探ります。
引き継がれていく虐待の連鎖
達障害を抱える子ども達の生育環境をたどっていくと、親から暴力は受けてないにせよ、口汚く罵られたり、邪魔者扱いされていた場合が多いのです。
さらに、その親もまた自分の親から同じ態度をされていました。
つまり、親から子へ負の連鎖が永久に続くことになります。
アメリカでのアカゲザルの実験によると、母ザルから虐待を受けた子ザルが親になると、自分が子どものときに受けた暴力をそのまま子どもにもする結果に……
しかし、幼い頃に母ザルから引き離して、虐待をしない別の母ザルの元に育つと、子ザルは虐待をしない母ザルに成長しました。
このことから虐待は遺伝的なものではなく、生育環境が大きく影響することが分かります。
イギリスの精神科医の研究によると、
子どもの頃に虐待の被害にあった人が、
・自分の子どもに虐待をする確率は3分の1
・ふだんはしないが、精神的にプレッシャーがかかったときに、虐待をしてしまうのが3分の1
・虐待せずに子育てができるのが3分の1
だったそうです。
この結果で、虐待の連鎖は最大で7割起こる事実が分かりました。
虐待の連鎖を起こさない3分の1になるのは、本人の努力が必要なようです。
連鎖を食い止める鍵になる愛着障害
親から虐待を受けた子どものほとんどが愛着障害になっています。
愛着障害は親からの養育がうまくいかなかった場合に起きる障害です。
子どものときには、発達障害と同じような症状となってあらわれます。
そのため子どもの頃には発達障害と誤診される場合も多いようです。
発達障害と違うのが、発達障害の子どもの場合、一日中多動なのに対して、愛着障害の場合、時間帯や状況によってムラが出ることです。さらに、発達障害の子どもは周囲の人との関係が素直でシンプルなのに対し、愛着障害の場合、友達と喧嘩したり、教師に反抗的な態度を取ったりして、人との関係にトラブルを抱えがちです。
そして、思春期を迎えると、トラウマ=心的外傷に悩まされるようになり、複雑性PTSDと呼ばれる症状、解離、抑うつ、気分変動、自傷行為、薬物依存、衝動的行動、を引き起こすようになります。
親の脳が変わると、子どもの脳も変わる
では、具体的にどうすればこの虐待の世代間連鎖を食い止めることができるのでしょうか?
日本では「子育てのための、暴言や体罰はしかたがない」という考えが根強くあります。
データでも2018年に日本で行われたアンケート調査でも約6割の人が体罰を容認すると答えています。
しかし、アメリカの過去50年にわたった分析でも、お尻を叩くなどの軽い体罰でも、それがのちのちの問題行動につながるという結果が出ています。
叩く怒鳴る子育ては害にしかならないということです。
「いや、でもそれ以外でどうやって、子育てすればいいの?」と疑問に思うでしょう。
答えは「褒める」です。
友田さんの提唱する子育てトレーニングでは、まず親を褒めます。
虐待をしている親は褒められずに育ったため、自己肯定感が低いのです。
親を褒めていると、やがて親が子どもを褒めるようになります。
「怒鳴る・叩く」で回っていた負の連鎖から、褒めることでプラスの連鎖が生まれます。
虐待が防止できるようになっただけでなく、子育てトレーニングを親が受けたら、
育児ストレスが軽減して、子どもの認知機能が向上し、問題行動が改善する結果につながっています。
ネガティブな負の子育ても連鎖しますが、プラスの子育ても連鎖するようになりました。
40年前から、国をあげて体罰や叱っての子育てを禁じたスウェーデンは、虐待が激減し、若者の犯罪も減少したと言います。
褒める子育ては、国の繁栄を左右する重大なポイントのようです。
まとめ
今回は友田明美著「親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる」を参考に、虐待を防ぐ方法を考察しました。
この本では、その他母親、父親共に、親になると、子育てのために脳の状態が変化して、よりハイスペックになることが言及されていました。
どんなときでも、自分の他者にも褒める気持ちが、全ての循環をよくすることが分かりました。
できるだけ、何事もいい部分を見るように気をつけたいものです。