2021年4月にはオリンピック の空手の代表選手が監督をパワハラで訴えたことが話題になりました。
そもそも、オリパラの組織委員会の会長辞任も、その場の空気を支配するキーマンの顔色をうかがって、言いたいことが言えない空気が元にあります。

昔から当たり前のようにあった出来事が、ここに来てようやく声を上げることができるようになったのでしょう。

今回は井口博著「パワハラ問題」を参考に、最新のハラスメント事情を考察します。

 

増え続けるハラスメント最新事情

 

 

ハラスメントの基本

 

ハラスメントの問題を難しくしているのは、被害を受けても、すぐには声を上げにく。
たとえば、外部で暴力や痴漢行為を受けたら、すぐに訴えることができます。
しかし、会社、学校などの閉じられた世界で、同じ行為を受けても、すぐに訴える人はなかなかいないでしょう。

なぜなら、加害者は自分のよく知っている人で、おおむねは自分より力の強い人です。
ノーガードの状態で、自分は反撃できないまま、ひたすら攻撃を受けます。
加害者が思いもしないような、ダメージを受けます。
たとえば、うつやPTSDなどの精神的な病、最悪の場合は自殺につながるケースもあります。

また組織にいる限り、上下関係があります。
ハラスメントの加害者、被害者になる危険性を常にはらんでいるのです。

 

多様化するハラスメント

 

ハラスメントの種類も年々多様化しています。
様々な生き方が多様化されており、うっかり昔のルールの言動を押し通そうとすると、いつの間にか加害者の立場になっている場合も出てくるでしょう。
以下に聞き慣れないハラスメントを紹介していきます。

 

ジェンダーハラスメント

 

女性だけにお茶くみや雑用などをさせるのはもちろんのこと、「男らしさ」を押しつけて、男性らしい力仕事を強要するのも問題です。
女性に対して、容姿などをいじるのも問題ですが、「ハゲ」「ジジイ」など男性に対して見た目をいじるのもハラスメントになります。
女性議員のパワハラで一頃話題になりましたね。

 

マタニティハラスメント・パタニティハラスメント

 

女性が妊娠・出産の場合に、お荷物扱いされてハラスメントを受けることもありましたが、最近では妻の妊娠・出産で育児休暇をとって手伝う社員にハラスメントするパタニティも問題視されています。

 

SOGIハラスメント

 

性的多様性が叫ばれるようになりましたが、一般に使われるLGBTはレズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの頭文字をとったものですが、最近では映画の性的指向=セクシャルオリエンテーション、性自認=ジェンダーアイディンティテーの頭文字を合わせてSOGIと呼ばれるのが一般的になっています。
SOGIでは、相手の性的指向や、性自認に対して憶測することもハラスメントにあたります。

 

カスタマーハラスメント

 

顧客や取引先から受けるハラスメントのことです。
内部の会社でのハラスメントと以上に、会社は守ってくれず、一人泣き寝入りするケースが多いハラスメントです。
社員だけでなく、中小零細企業の経営者も、立場の弱さから取引先から精神的苦痛を受けるのも多いのです。
また、介護現場でのハラスメントも申告になってきています。
前世代のお年寄りは介護職員を、自分の子供や孫のように親しんだに対して、顧客意識が強くなったお年寄りは、介護職員に対して厳しく接するようになり、ハラスメントに発展するケースが多くなってきました。
介護サービスのうち、もっとも利用者のハラスメントの割合が多いのが介護福祉施設です。
また、お年寄りからのセクハラも多いようです。
しかしながら、カスハラは正当なクレームとの判別がはっきりせず、被害者が法的に守られていないのが現状のようです。

 

ソーシャルハラスメント

 

プロレスラーの木村花がネットでの誹謗中傷で自殺したことで話題になりました。
誹謗中傷した人々がだんだんと特定できているようですが、誹謗中傷を防止することも難しく後を断たないのが現状のようです。
他のハラスメントと違い、すぐに加害者が特定できないことが、問題の解決をさらに困難にさせています。

 

ハラスメントのハラスメント(ハラハラ)

 

全てをハラスメントを全部ハラスメントだと言われたら、何も行動できない。それをハラスメントのハラスメント=ハラハラと言うのですが……
「全てを駄目だと言われたら、何も言ったり、したりすることができない」という言葉を言い訳に、結局、ハラスメントする側が全く、自分の行動を振り返らずに、今まで通りの行動を押し通す。
これが一番、危険かも知れません。
まさしくハラハラです。

 

withコロナ時代のハラスメント

 

コロナ禍によって、ますますテレワークの動きが多くなってきました。
そのためテレワークにおけるテレワークハラスメントが多くなってきたようです。
職場でいるときは、私生活を探られる余地はありませんが、テレワークだと、会社の人にプライベートを覗かれてしまう不快感があります。
テレワークは出勤しなくていいというメリットもある半面、私生活と仕事の区切りがなくなり、職場とのコミュニケーションに関する問題もあり、まだまだ改善する余地がありそうです。

 

まとめ

 

今回は、最新のハラスメント事情をお伝えしました。
日本の社会は今までハラスメントのありきで成り立ちすぎでした。
ハラスメントに対するリテラシーが高まり、社会に浸透した時点で、本当に仕事に対する成果が問われるでしょう。