「歳をとって丸くなった」と昔はよく言われましたが、最近はあちこちで怒れる老人の姿をよくみかけるようになりました。

路上で、店で、駅で、車上の無謀運転で、老人は暴れ回っています。
令和2年の警察白書では老人が犯罪の被害者になる特殊詐欺の防止の取組と、老人が加害者側になってしまう犯罪の防止の取組が議題になっています。
怒れる老人と対峙しないといけないのが高齢化社会の現実です。
日本のアンガーマネジメントの第一人者安藤俊介さんの著書「怒れる老人」をヒントに
怒れる老人対策と自分が老害にならないためにはどうすればいいかを考察します。
怒りのメカニズムを知ると、どうすれば怒りを抑えられるか防止できるかが分かり自分の気持ちとコントロールできるようになります。

なぜ老人は怒りやすいのか?

 

現代の老人はなぜ怒りやすくなったのか?
第一に身体的な理由。
加齢が進むと理性を司る前頭葉の抑制が効かなくなり、だんだん思ったことをそのまま言動に移してしまいがちになるようです。
歳をとれば、当然、目、耳、記憶力、認知機能、いろんなものが衰えてきます。
それに対して、世の中はどんどん形式が変わっていって、キャッシュレスやカード
やら、自分たちでは使いこなせないものばかりで、苛立つものが増えていくばかりです。
そして、矛盾しますが現代の老人が怒るのは昔と比べて元気で、身体的精神的エネルギーが有り余っています。
昔の老人は怒る気力体力が残っていなかったのですね。
第二に社会的な理由。
現代の老人はみんな社会の裏切りを感じているそうです。
その年代の人たちの企業ではブラックは当たり前、家庭は妻に任せて、仕事に全てを捧げました。それも、終身雇用で、定年すれば悠々自適で楽な暮らしができると信じていたからです。
しかし、長い経済の停滞で、定年後は厳しい生活を強いられています。
70代、80代でも働いている人もいます。
にも関わらず若い人から老害と煙たがれ、ほったらかしにしていた家庭には居場所はありません。若い世代を温かく見守る余裕はないのです。
第三に、個人的な理由です。
怒れる老人は、執着、孤独感、自己顕示欲が大きい人です。
この3つが強く、裏切られると怒りが爆発します。

 

怒りのメカニズム

 

怒りのメカニズムは、ライターに象徴されます。
炎が怒りだとすれば、着火スイッチが「〇〇であるべき」「〇〇すべき」です。
こだわっているものが多ければ多いほど、まだそのこだわりがふかいほど、着火ポイントが増えていき広がっていきます。
着火スイッチだけでは火はつきません。
炎の元になるガスが必要です。
怒りのガスになるのがネガティブな感情と状態です。
前述した怒れる原因が積み重なっていくと、不満、不安、孤独感、焦り、いろいろなネガティブな感情が溜まっていきます。
また、年齢が上がると体調がすぐれないときも多くなります。睡眠不足、疲労、身体の痛いところがある。
ネガティブなものが溜まっていると、怒るポイントが見つかると一気に爆発するのです。

 

怒れる人に対する対処法

 

怒れる人と対峙したとき、まず一番にやるのが観察です。
怒れる人のリクエストが何かを見極めます。
怒れる人自体は思いを爆発させただけで、本当は何がリクエストなのか知らない場合もあるのです。
リクエストが何か見極めたら、相手の話を聞くなり、不満を解消することなら、リクエストに応えれば怒りはおさまります。
問題はその内容が理不尽な場合です。
怒ることで自分の意見が通った経験があるので、自体を有利に進めるためにわざと怒っているのです。
こうした場合は、相手のいいなりになると思う壺ですし、かといって正論で返しても相手の怒りは倍増するだけです。
正論ではなく事実で対応し、相手の怒りに同調し、ねぎらいながら、相手のマイナス感情、不安なら不安、孤独なら孤独を小さくする方に持って行きます。
もし、自分が関わるべきでない怒りと見極めたなら、速やかに相手と離れることが肝心です。
できることだけに対処し、できないことは最初から関わらないことです。

 

老害にならないための方法

 

誰もが年を取るので、いつ私たちが老害と言われる立場になるか分かりません。
ではどのように対処すればいいのでしょう?
安藤さんは怒れる理由の個人的要素「執着」「孤独感」「自己顕示欲」をできるだけ減らしなさいと説きます。
こだわるものが多くそれが深くなるほど、執着するものをたくさん重く抱えることになり、その分、怒りが沸き起こる発火点が多くなります。そんな人は本当に大切なものはなにか見極めないで闇雲にこだわりコレクションを溜めているかもしれません。重要なものを見極める。こだわり断捨離がおすすめです。
最初から人間関係は希薄でよくて、1人でも寂しさを感じない人は、孤独感を感じません。
むしろ、人とつながりたいのに繋がれない、人と別れることに人間はつらさを感じるのです。
自己顕示欲の老害を感じるのは「政治家」「企業家」など地位や名誉にしがみつく人です。
権力を持たない人は最初から自分をひけらかしたい気持ちはないからです。
「執着」「孤独感」「自己顕示欲」を減らす考え方は、仏教、儒教、道教などの東洋思想に通じるものがあります。
古来の教えが廃れていることが、怒れる老人問題の引き起こしているのではないでしょうか?