探偵と刑事の仕事は似て非なるものです。
例えば探偵が聞き込みをする場合、絶対に自分の素性を悟られないようにして、調べてていることさえ知られないように、外堀を埋めていくように調査します。
ところが刑事は容疑者を自白させて起訴するまでが仕事です。
ドラマと違い、現実では探偵は容疑者を自白させる場面はありませんし、逮捕する権限もないのです。
相手が逃げられないよう白状させる技術は刑事の方が上手です。
そんな凄腕刑事が浮気を白状させる技術を詳細にわたって記した本が森透匡著「元知能犯担当刑事が教えるウソや隠し事を暴く全技術」です。
本では丁寧に解説していますが、このコラムでは要点だけをかいつまんでお伝えします。

 

 

真実を明らかにするには証拠が大前提

 

森氏が力説するのはまず相手がウソをついているのを白状させるには、証拠が必要です。
たとえば浮気なら浮気を間違いなく決定づける証拠を直接証拠、相手のウソが証明されるような間接証拠になります。調べられる限りの証拠をかき集めて用意することが肝心です。

 

ウソをついている相手が恐れていること

 

知人と新橋の居酒屋で飲んだとウソをつき、愛人と六本木のイタリア料理店へ行った後、ホテルに向かったとします。
あなたはパートナーが風呂に入っているときに料理店の領収書を発見します。
風呂上がりのパートナーに本当に新橋にいたのか確認します。
ここで問い詰められているパートナーは心の中で何を考えているでしょうか?
パートナーはあなたの問いに適当につじつま合わせをしながら、あなたが何の証拠を握っているのか、探っています。
自分がどんな証拠を残してしまったのか? その証拠を事前に先回りして察知してその証拠に合わせた言い訳を考えます。
悪事を働いた人はおおむね相手の質問に対して嘘を交えて答えながら証拠の存在を探っていくパターンをたどります。
追求する側と追及される側の双方が腹の探り合いをしながら駆け引きをしている状態になります。
相手があなたの持っている証拠に見当がついていない場合は、領収書を出すと言い逃れできずにしどろもどろになり領収書が有力な証拠になります。
しかし、料理店の領収書を持っているとパートナーが察知した場合、その領収書はひろったものだと言い逃れすることができます。
同じ証拠であっても出すにはタイミングが重要で、最初から相手に手の内を見せずに、あなたの秘密は全部知っているという態度で接するのが大事です。早めに証拠を出してしまうと、パートナーの方が考えを整理して、言い訳を考える余地を与えてしまうからです。
嘘をついている相手や隠し事のある相手から真実を聞き出そうとする際は基本的には証拠を示さずに相手を疑心暗鬼にさせておいた方が有利に進むのです。
素人は見つけた証拠をすぐに相手に突きつけるケースがほとんどです。「これは何なの!」と怒りをあらわにした感じで情報を相手に示してしまいます。これは絶対にやってはいけないことなのです。

 

悪事を働くやつには余罪がある

 

さらに注意するべきなのは悪事を働くような人物の場合には多かれ少なかれ余罪があります。大概は他にも同様の状態がある可能性が高いのです。例えば浮気であれば複数の相手と交際しているケースもあります。
悪事を働く人はできるだけ罪を軽くして、認めるなら罪が軽いものから認めようとします。それで追及の手が緩めばしめたものです。
一方、追求する側の心理は一つでも相手が認めてくれたと喜んで、追求の手を緩めがちです。
それは相手の思うつぼで、他の悪事を隠蔽させるチャンスを与えてしまいます。追求する側は「それ以外にもあるよね」と気を緩めないことが大事です。
相手に話を続けさせて、最後に認めた事実が実は一番言いたくなかった真実です。最後に認めた事実を細かく深く掘り下げていけば、全ての悪事を明らかにできます。

 

証拠が足りない場合は泳がすのもあり

 

証拠集めが重要と言いましたが、それでも証拠が足りない場合は相手を泳がすのも一手です。
マトリ・麻薬取締官は何年も時間をかけて調査対象を追いかけることで有名です。
現行犯で逮捕することが鉄則なので、踏み込んでも確実に動かぬ証拠をみつける必要があるからです。
浮気ならばあえてすぐに浮気を問い詰めずに、パートナーを自由に動かしておくのです。
しかし、相手に疑っていることばバレたらもともこもないので、深追いしないことが鉄則です。
それでも証拠がでないときは、あなた自身がわざと旅行などで予定を作って数日間、家を留守にします。
もしパートナーが浮気をしていたら、チャンス到来、ここぞとばかり浮気相手と会う可能性が高くなります。
その日の行動を調査すると、もっとも証拠を掴みやすくなります。
パートナーもまさか旅行しているあなたがパートナーを監視しているとは思わないでしょう。