クリント・イーストウッドと並んで長きにわたって第一線で評価される作品を作り続ける映画監督兼俳優ウディ・アレン。作品自体もいつも約90分程度の小品なので、日本の知名度は低いですが世界的には超一流の評価を得ています。アレンが養女に性的いたずらした疑惑が起こったのは1993年と実に30年も前の話。しかし、#MeToo運動以来、性的な問題を起こしたらどんな大物でも一発退場の空気がある中、なぜアレンだけが映画を撮り続けることができるのでしょう? そこには日本のジャニー喜多川氏性加害問題と同じような社会構造がありました。

 

 

複雑すぎるファローの家庭事情とアレンの性癖

 

アレンと内縁関係だったミア・ファローは芸能一家に生まれ10代の頃から話題作に出演しています。前の夫と暮らしているときから、人種性別問わず身寄りのない子供を養子にして大所帯で暮らしていました。その中にのちにアレンの妻となるスン・イーや性被害を受ける
ディラン(女性)もいました。アレンは子煩悩とは言いがたい性格で、内縁関係でも住む場所は別々だったようです。「マンハッタン」や「人生万歳!」など、10代の女性と父親、あるいは祖父ほど年齢の離れた恋愛関係が描かれています。アレンが若いというよりも幼い女性に性的対象であったのはあきらか。幼い女の子がいっぱいいるファロー家はアレンにとって絶好の漁場だったのかもしれません。

 

ディランを守るため法廷は行われなかった

 

やがてアレンはミアからディランの性的いたずらで訴えられます。しかし、アレンはニューヨークにとっては大金をもたらしてくれる有力者。司法や病院に手を回してディランの発言をミアからの洗脳と片付けてしまい、証拠も破棄します。ミア側の武器の唯一はディランの証言ですが、担当検事は幼いディランがマスコミの餌食にならないために法廷に持ち込みませんでした。結局、アレンの罪は問われずじまいでした。しかし、アレンが後に起こした親権を巡る争いの中で、アレンのディランへの性加害が明らかになっています。刑法ではアレンの性加害は立件されなかったのに、民法上では性加害があったと証明されているのです。
アレンの親権は認められず、ミアの単独親権になりました。
ニューヨークや映画界全体がアレンを守る方向に動き、事件は封じ込められたまま、アレンはそのまま映画を製作し続けたのです。ジャニー喜多川氏の性加害が裁判で立証された後も犯行は続き、芸能活動も継続していたのに通じます。

ディランがやっと自ら性加害を発信できるようになったのは、#MeToo運動がさかんになってきてからでした。それまではなんと#MeToo運動の牽引者となったディランの弟で弁護士でジャーナリストのローナン・ファローでさえもディランの告発に反対だったそうです。
やっとディランの訴えが世間に信じられるようになっても、アレンが映画界から追放されることはありませんでした。

さすがにニューヨークでは映画を撮りにくいのか、活動拠点をヨーロッパに移しています。
エンタメ業界もアレンの扱いに対して意見が割れているようで、Netflixではアレンの映画は一切視聴できませんが、U-NEXTやアマゾンでは視聴できるようになっています。

ウディ・アレンと同じようにジャニーズ事務所のタレント達も問題視されながらも、このまま活動を続けていくのでしょう。