動物行動学者の竹内久美子著「生き物に学ぶ自己防衛術」
貧乏でも、中流でも、金持ちでもみんな幸せになれる!
ワキモンタと言うトカゲがいます。
北アメリカに住む小さなトカゲですが、オスには3つの生存戦略があります。
なんと喉の色で戦略が違うと言うのです。
オレンジは一夫多妻。
ブルーは一夫一妻。
イエローは独身のフリーです。
イエローのオスはメスに擬態しているのです。
繁殖期のメスも喉がイエローなのです。
この図式だと完全にオレンジの天下のように思われるかも知れません。
オレンジ一番上
ブルー真中
イエローみじめ。
みたいな図式が想像できます。
しかし、イエローのオスには戦略があるのです。
オレンジはたくさんの妻がいるので、一匹に構っていられません。
イエローのオスはオレンジのたくさんの妻に紛れて侵入し、そこでちゃっかりオレンジの妻の一匹と交尾するのです。
なので、一見一番みじめなイエローのオスが実はちゃっかり、ブルー以上に、オレンジと同じ位のうまみを享受しているのです。
一人の奥さんを大切にして、家庭を守る。
そんなまじめな人より、独身を謳歌して勝手気ままにしてる人の方が得する?
「そんな馬鹿な」と思われますが、モテない点ではブルーが一番です。
逆に言えば生涯一匹のメスと添い遂げる幸せを味わえるのはブルーだけなのです。
幸せのカタチはそれぞれでしょうが、一番大変だったろうし、これこらも大変なのはオレンジのオスでしょう。
他のオス達との戦いの中で勝利してきたからこそ、たくさんのメスを妻に迎えたことができたのでしょうし、その地位を保つのも大変な苦労があるでしょう。
しかし、この三色の比率は長いスパンで見てみると、一定で変わらないそうです。
オレンジが増えた場合は、オレンジ間で競争が激しくなってブルーが増えて、ブルーが増えてたらまたブルー間の競争が激しくなって、イエローが増えていく。
その循環を繰り返していくようです。
となると、苦労して立派な地位を築いた人と、楽に自由にやってきた人も結局はあまり変わらないという身も蓋もない結果。
格差が広がる社会ですが、幸せという基準に関しては神様は平等に作ってくださっているのかもしれません。
注意!やられたら倍返しはまちがい!
「目には目を。歯には歯を」という有名な言葉があります。
元は決して「やられたらやりかえせ」という意味ではなかったそうです。
大ヒットドラマ「半沢直樹」のように
「やられたら倍返し」は絶対にいけないやってはいけない。
やられた以上に報復すると、今度は、またそれ以上に報復されて、ついには、滅ぼされてしまう危険があります。
言われてみると、半沢直樹も、倍返しした後、さらに大きな災難が降りかかっていました。
折れない心は、災いを招く
エンターテイメントの世界では、絶対に困難を諦めず心で立ち向かっていくヒーローたち、たくさん登場します。しかし、実際の社会では、逆に折れてしまわない方が危ないというのです。
コオロギのオス同士を4匹を容器の中に入れて対戦させます。
強さを見極め、ランキングを作っていきます。
強い2匹と弱い2匹を2つの容器に分けて再び対戦させます。
その中でも、強いコウロギが弱いコウロギを圧倒します。
また1つの容器に入れると、ランキングが入れ替わっています。
弱いチームで全勝したコオロギが2位に浮上。
負け癖がついてしまったコオロギは、弱くなり、弱い組の勝者も勝ちグセがつき強くなっていたのです。
1つの容器に戻すと、順位は元通りに戻っていたというのです。
実際の自然界にいるコオロギは、こんなにたくさん他のオスと戦うことはありません。
気弱になって、戦う意欲がなくなったコオロギは、隅の方でじっと隠れています。
まるで引きこもりですが、生存戦略的には、正しい判断です。
実力が近いものと戦っても負けたののであれば、体調が悪かったり体に故障がある可能性があります。
だとすれば、回復のためにしばらく休んでおくのが最も良い選択です。
自信喪失や気弱な心、恐怖心というものは、本来、このように身を守るために大切な心理なのです。
体調が悪かったり体に故障があるというのに、少しも気弱にならずに、折れない心で、自信満々で戦いに出かけると、大怪我を負ったり、最悪死に至る危険があります。
本来、折れない心を持つのは、実は、大変危険なことなのです。男は、自分の弱みを見せたり、弱いことを認めることをひどく嫌うものですが、そのプライドこそが命取りなのです。
ドラマのタイトル通り「逃げるは恥だが役に立つ」のは本当のようです。
コオロギの実験が示すように実際の勝負は実力通りではなく、運や巡り合わせに左右されます。リスクを背負って一直線に進むだけでなく、引く時には引いて次に備えることも大事なようです。
まとめ
人生が長くなればなるほど、勝ち組負け組の基準がはっきりとしてきますが、生き物にはそもそも身分や勝ち負けの区別なんてないのかも知れません。
生き物の生態はそのことを教えてくれます。