「丸くおさめる交渉術」の著者三谷淳さんは現役弁護士です。
別名「日本一裁判をしない弁護士」と呼ばれ、裁判で決着するよりも、話合いでスピード決着することを主眼に置く弁護士さんです。
三谷さんの交渉術は、以前紹介した交渉術の本「おとしどころの見つけ方」に交渉のための、BATNA(バトナ)を準備するという手法に共通するものがあります。
その上、三谷さんの方針は3つです。
・スピード決着をする
・相手の期待値を飛び超えること
・長期的な利益を優先すること
三谷さんは「裁判に勝ってこその弁護士」というイメージから脱して、裁判になる前に、双方の言い分を聞いて、お互いに丸くおさめるスタイルを貫いています。
何かしらの裁判を経験した方ならお分かりでしょうが、決着が着くまでは悶々として、夜も眠れらない人も多いものです。
それが長引けば長引くほど、裁判費用もかさみ、心労も重なります。
早めに妥協点をみつけて、早期決着をした方が、長期的にみたらお互いにメリットがあるのです。
今回は「丸くおさめる交渉術」からテレビドラマに登場した弁護士の交渉スタイルを紹介します。
「99.9刑事専門弁護士」
刑事裁判で有罪判決を受けたら、それをひっくり返すのはほぼ不可能。その不可能に挑戦する弁護士を描いたドラマですが、「正直そこまですごいこと?」と思ってしまいました。
なぜなら日本の弁護士が主人公のドラマが真犯人をみつけ、冤罪の人を助けると言うパターンだからです。
古くからの連続ドラマでも2時間サスペンスでも、弁護士さんは実像とは違って、名刑事・名探偵の役を果たしていました。
松本潤さん主演もこの形式を守って、泥臭く足を使って調査していました。
ホームレスの人と一緒に行動して、証言をとって、相手の目線に立った調査をしていました。
交渉の悪いお手本「リーガルハイ」
ドラマでは前述のような正義の味方の弁護士がほとんどの中、一線を画す異色の法廷ドラマした。堺雅人さん演じる古美門弁護士は金のためなら、黒い物でも白にして、白いものでも黒にするという拝金主義の弁護士でした。
ドラマとしては悪が善に勝つ―という展開が、一転ひっくり返って本当の真実とは何かを考えさせられる内容でした。
ですが、当の古美門は、強引なやり方が災いして、敵も多く作り、結果は弁護の依頼も来なくなるという結果に……
長期的な視野から見ると、「自分が勝つことばかりを考えると最終的には自分の首を絞めることになるよ」という教訓を教えてくれるドラマになりました。
下町ロケット
下町ロケットでは「私は負ける裁判はしない」という決め台詞が話題になった恵俊彰さんが演じた神谷弁護士が活躍。
町工場の佃製作所が作った特許製品を、池畑慎之介☆さんが演じる大会社の子飼いの中川弁護士が妨害するという図式でした。
神谷弁護士も裁判で真っ向から、主張を争うのではなくて、裁判の枠の外での枠組み、つまり、双方の立場よりも真の利害をみつけて、そこから交渉を進めるというやり方をしていました。
まさに「丸くおさめる交渉術」の理念と同じですね。
しかし、ドラマでは町工場が勝ちをおさめましたが、現実社会ではどうでしょうか?
やはり、大会社の方が力を持っていて、小さな会社が大会社に勝てるのは難しいような気がします。
たしかに昔は大会社の圧倒的な財力・権力に、零細企業は屈していたようですが、だんだんとその風潮も変わってきているようです。
神谷弁護士のモデルとなった知財専門の弁護士鮫島正洋さんの弁によると、国も方もイノベーションを起こすのは大企業ではなく、中小やベンチャー企業だと目先を変えてきているそうです。
ちなみに「私は負ける裁判はしない」と言う台詞は、鮫島さんが言ったものでもなく、池井戸潤さんの原作にもなく、ドラマオリジナルのものだそうです。鮫島さんもシナリオチェックして直したそうですが、そのまま放送されたのだとか。
その台詞が話題になって、今度は池井戸潤さんが気に入り、原作にも取り入れられるようになったそうです。
交渉しても無駄な相手もいる
「丸くおさめる交渉術」には様々な交渉に大事なことが書かれていますが、唯一、感情的な交渉は時間とお金の無駄だと断言しています。
いわゆる「聞く耳持たない」人でしょうか?
感情(勝ち負け)に流されず、勘定(長期的利益)で判断できればいいのですが、世の中にはズルイ人、無責任な人、傲慢な人は少なからずいます。
そのような人との交渉に無駄なお金や時間を使うより、もっと有意義なことに投資しましょう。
まとめ
人間は1日に5回は交渉をしていると言います。交渉上手になったら、人生が今よりもっと楽しくなりそうです。
興味があった方は「丸くおさめる交渉術」を読んでください。
具体的な交渉術が学べます。