ChatGPTなどのAIツールが実際に活用されるようになり、いよいよ人間のしている仕事はAIがとってかわるようになる……と思われる人も多いでしょう。ところがAIの仕事を支えているのは、実はネット内職ともいうべき低単価でこき使われる労働「ゴーストワーク」に支えられているのをご存知でしょうか? メアリー・L・グレイ、シッダールタ・シリ著「ゴーストワーク」ではその恐るべき実態が報告されています。
AIがあるから人間はいらない? いや実はAIの下で無数の人間が働いていた
実はAIがものを判断するためには膨大なデータを教えこむ必要があります。アダルト的な画像や動画を監視するようにAIが検出するようにするためには、どの画像がアダルト的な規定に引っかかるのか、人間の目で確認し識別したデータを準備しなければなりません。気の遠くなる作業を行うのは、人間の役目。1回何十円などの、低単価で雇われた在宅ワーカーが行っているのです。よくIT業界の有識者の本のタイトルには「仕事は高速ですませろ!」というタイトルがありますが、仕事を早く済ませるポイントは、「重要でない仕事は他人にふること」と主張しています。IT業界の利益率が高いのは、重要でない仕事を在宅ワーカーにふって搾取し、美味しい利潤だけを吸い取っているという背景もあるのです。
低単価のゴーストワークを辞められない理由とは?
ではなぜ在宅ワーカーは「搾取案件」「地雷案件」といういくらやってもお金にならずただ疲弊するだけの仕事をなぜ受け続けるのでしょうか?
もし在宅ワーカーを辞めた場合、本書ではプランBという選択肢を取ることになります。
プランBとはいわゆるエレメントワーカーで、外に出て慣れない辛い仕事をするか、家にいて慣れた辛い仕事をするかの二択になります。
プランBの仕事の場合、慣れない人が時間のシフトをもらえる可能性は低くなります。それなら長時間の労働になっても、時間や場所の制約のない在宅ワークを選択するしかないのです。
こうした「ゴーストワーク」は出来高制なので、成果にならなかった時間は報酬に入らない場合が多くなります。労働としてきちんと認められ、対価が払われるようになると、状況は変わってくるかもしれません。しかし、そうなると、儲かってしょうがないといわれるIT業界の状況も変わってくる可能性もあります。