女子テニス界のトッププレイヤーの大坂なおみさんが鬱を告白しました。
スポーツで頂点に立つ人はメンタルをトレーニングしているので精神もタフのはず……と思いこんでいましたが、選手も人の子なんですね。
ポジティブシンキングは場合によっては逆効果でありピンチの時には逆に自分を追い詰めてしまうと警鐘を鳴らしている人がいます。
スポーツ指導者の友末亮三さんです。
著著「疲れ切った心を癒す積極的マイナス思考」は逆境にある人の心の持ちようを教えてくれます。

 

 

積極的マイナス思考とは

 

「逆境に打ち勝とう」
「一緒に頑張ろう」
2020年に最初に緊急事態宣言が起きたときは、プラス思考的なスローガンのオンパレードでしたが、さすがに何度も緊急事態宣言が発令されると、プラス思考も消しとんでしまいました。
ポジティブな動画やメッセージは人々にエネルギーを与え続けられるとどんどん元気になっていく人もいます。
多くの人はだんだんポジティブ疲れを起こしてしまいます。
過度のプラス思考はマイナス思考の裏返しで、前向きでいこうと強く思えば思うほどマイナス面であるストレスも増大して行きます。
友末さんはこれをポジティブ疲れと呼んでいます。
ポジティブ疲れを克服するために、友末さんは「積極的マイナス思考」を取り入れました。
積極的マイナス思考ではストレスは取り除けません。
ストレスがあることを正直に認め、自分は弱いということを出発点にして、様々な工夫を行っていきます。
積極的マイナス思考を身につけると災害や困難に遭遇した時、また自分と違う考えや嫌なことに出くわした時の選択肢が増えます。
白黒はっきりさせようとするだけではなく、それをグレーゾーンの中で受け止めスイスイとかわせるようになります。

 

ポジティブ思考は逆効果?

 

友末さんは摂食障害に悩む選手にプラス思考を強要したために自殺未遂を引き起こした経験から、プラス思考には弊害もあると気がつきました。
友末さんが試行錯誤のうえに行き着いたのがプラス思考とマイナス思考にはそれぞれ2種類、合計4種類あると発見しました。

 

思考の4種類

 

・消極的プラス思考
自然にそう思うのはなく、努力してプラスになろうとしているので消極的です。
・積極的プラス思考
おもしろい、たのしいと自然と考えがプラス思考になっています。
・消極的マイナス思考
「どうせうまくいかない」「やっぱりダメ」というどうせダメだという後ろ向きの思考です。
・積極的マイナス思考
「うまくいかなくて当たり前」「ダメでもともと」など、絶望的な状況や深刻な悩みを受けいれる思考法です。

これは誰しも1つの思考にとどまっているワケでなく。
1度消極的マイナス思考で、とことんまで思考がどん底まで落ちていくと、不思議と気持ちは再び上向きになって、「ダメでもともと」の気持ちが働き、上向いていきます。
ここまで来ると、本来あるべき積極的なプラス思考に切り替わっていきます。

一旦、自分のことをあきらめ、開き直ることで、できない自分を認めて精神に余裕が生じて、ストレス耐性を高めることができます。

 

日本のメンタルの専門家の問題点

 

友末さんは日本のメンタルトレーニングの問題点を3つあげています。

・メンタルトレーニングのほとんどが海外の借り物である
・もともと日本のメンタルトレーニングの指導者は自分のメンタルの弱さを克服しようとしてその道を進んだ人が多くて、メンタルが生まれつき強い人の欠点が見えにくく新しい思考法を思い出そうとしても限界に当たりやすい。
・業界以外の発想に排他的である。自分の専門分野でない研究者の議論を無視する傾向がある。
現に友末さんが推奨する「積極的マイナス思考」も業界からは無視され続けられていると言います。

 

積極的マイナス思考はノムさんのぼやきに学べ

 

積極的マイナス思考のお手本が日本のプロ野球で数々の実績を残した故野村克也さんのぼやきでした。
まず「理想と現実の間にあるキャップ」「怒り」「嫉妬心」のマイナス要因に着目します。これは「消極的マイナス思考」の段階です。

マイナス要因を最悪の事態までシュミレーションしていきます。
これが「積極的マイナス思考」の段階です。
最終的に、マイナスのエネルギーを「努力」「周到な準備」「集中」といったプラスのエネルギーに変換していきます。
「積極的プラス思考」へ到達しています。
野村克也さんの場合、ただのぼやきでは終わらずに、マイナス思考を最大限に活用していたのですね。
これは、野村さんのポジションが全体を見渡す、監督やキャッチャーだから幸いしました。
これは攻撃的なピッチャーの役割だと、ぼやきすぎたらマウンドに立てなくなっていたでしょう。

 

まとめ

 

スポーツの世界では勝ち負けが全てで結果を出せば、文句を言われません。
しかし、勝負以外の部分では複雑な利害関係があるようで、そこは現実社会同様、自分ではコントロールできないもののようです。
一筋縄ではいかない世界に対応するために、積極的マイナス思考が役に立ちそうです。