中高生時代に壮絶ないじめを経験した後、出産育児を経て弁護士になった菅野朋子さん。著書「いじめられっ子だった弁護士が教える自分の身のまもり方」では、法律を踏まえたいじめ対策が紹介されています。

 

 

法律を知って、いじめっ子を撃退する

 

菅野さんは「法律は弱者を守るためにあるもの」と断言しています。たくさんの人が生活しているこの世界では同じ価値観や同じ行動を取る人ばかりではありません。そのためお互いに対立したり、利益を主張しあったりする問題が生まれます。

ルールがなければ、悪知恵の働く人や強い人だけが得する弱肉強食の世界になってしまいます。弱者やだまされた人が安心して暮らしていけるための国家レベルのルールが法律です。
いじめの渦中で、「誰も味方になってくれない」と孤独に感じていても、法律だけは守ってくれます。

いじめで殴る・蹴るなどの暴行を加えたら暴行罪。また暴力で怪我をさせたら傷害罪になります。

かつあげをしたら恐喝罪、財布を盗んだら窃盗罪、本人の意思に反して土下座をさせたら強要罪です。他人に言いふらしてほしくないようなプライバシーを暴露した場合は名誉毀損罪。みんなの前で「バカ」「死ね」と言うと侮辱罪が成立します。

こういった行為は犯罪として法律で禁止されており、罪を犯した人は法律で罰せられます。
しかし、日本には少年法という法律があり、14歳未満の子どもは少年法によって刑事責任を問われません。ただ、刑事責任に問われないからといって、犯罪をしていないことにはならないのです。いじめはれっきとした犯罪です。

刑事責任がないからといって、完全におとがめなしにはなりません。
14歳未満であっても、罪を犯せば児童相談所に通告されて指導を受けますし、重大な罪を犯せば家庭裁判所に送致され、場合によっては少年鑑別所へ収容されます。また保護観察の対象になれば、定期的に保護司と面会し、生活状況を報告しなければならなくなります。

さらに家庭裁判所の審判によって矯正教育が必要であると判断されると少年院に収容されます。14歳以下であっても法律に基づいた手続きを受けるのです。
いじめを受けた人は黙っている必要はなく、いじめの被害を訴え、法律に従って対処してもらえます。

いじめで無視されたというような、犯罪行為として認められづらい行為でも、刑事ではなく民法上の不法行為にあたります。

他人に損害を与えれば不法行為となり、損害賠償をしなければならなくなります。いじめで無視することも、不法行為と見なされ損害賠償の対象になることもあります。

いじめの被害者が裁判を起こすことで、加害者が12歳以上の場合は損害賠償の責任があると見なされ、場合により親の責任を問うこともできます。